「うちみたいな零細企業は、国内で賄いたいのが本音。今の内需では中途半端。中国の販売ルートを整備するため、現在、台湾人がやっている代理店などいくつか並行したルートで輸出を模索しているところ」
東京都大田区で精密ボールねじを生産する伊和起ゲージの広瀬安宏社長は語る。同社は20人強の社員を抱える、「町工場」だ。
いわゆる「六重苦」で産業の空洞化が一段と進むなか、それでも輸出で稼ぐ企業がいる。
血液検査機器・試薬メーカーのシスメックスは、一昨年来円高が進むなか、海外売上高比率を67.5%から69.0%へと伸ばしている(前年同期比・第3四半期決算累計ベース)。
同社は約9割を国内で生産し、160カ国以上に輸出する。医療機器だけでなく、機器購入後に医療機関が必要とする試薬も販売し、その後の保守サービスも請け負う。「技術開発・製品・サービス、これらが一貫して高品質と海外でも評価されている」と家次恒社長は語る。この戦略が可能になった背景には、長年にわたる販売網の拡充がある。
潮目の変化に乗じ代理店を買収
主要な市場の欧米やアジアなどでは、当初現地の代理店経由で販売しており、機器やサービスの売上規模は大きくなかった。また、価格交渉による時間や流通のロスも発生していた。
そこで同社は、ベルリンの壁崩壊後の1990年代、そしてアジア通貨危機後の90年代後半に、現地に販売拠点を設立した。顧客である医療機関へ直接機器やサービスを提供するためだ。「各地域の潮流の変わり目に乗じて比較的安く現地の代理店を買収できた。日頃の販売を通じて、有力な顧客を持ち販売力のある代理店を絞っていた」と語る家次社長の視線は次に向かっている。
「当面は“人口大国”の中国・インドと、“資源大国”のブラジル・ロシア、そしてその周辺新興国といった検査需要の増える市場に重点的に投資を進め、今後は中東・アフリカの市場も狙いたい。昨年1246億円の売上を5000億円にする」と家次社長は意気込む。
切削工具・超硬小径エンドミルメーカー、日進工具(品川区)。6ミリ以下のエンドミル市場は約150億円のニッチ市場だが、国内シェアトップ(約3割)。海外売上高比率も、リーマン・ショック以降円高が進むなか21%台を維持、今期は若干の上積みをも見込む。従業員数が約230人の中小企業ながら、20年前から海外営業部を設け、EUや中国、ASEANへ直接営業し、現地で商談会も開く。