CSISのウェブサイト5月31日付で、Michael McDevitt元米海軍副提督が、東アジア情勢が変わってきた今、米日はこれまでの役割分担を見直すなど、対中戦略のあり方を再検討すべきだ、と論じています。
すなわち、これまでソ連(ロシア)や中国は大陸で優位を保ち、米国は島国との同盟によって海洋で優位を保ってきたが、中国が自国の防衛線を陸地からはるか遠い海洋の中にまで押し出そうとし始めたことで、この勢力バランスが崩れる危険性が出てきた。
人民解放軍は、潜水艦、対艦ミサイル装備陸上配備攻撃機、弾道ミサイル、有効な海洋偵察能力等を基盤とする接近阻止/領域拒否能力を獲得し、米国の海軍力と空軍力をできるだけ中国から遠く離し、中国に寄せ付けないようにする戦略を取り始めている。
これは、中国が、1)台湾の独立を米国が支援した場合、それを阻止できないことを恐れたのと、2)歴史的に中国は海洋からの攻撃に対して脆弱であり、アヘン戦争などの屈辱を味わってきたという経緯があるためだ。
この中国の「反干渉作戦」の挑戦に対し、米国は2010年の「4年毎の国防計画見直し」の中で、接近阻止/領域拒否の脅威に反撃することを目的とする、「エアーシーバトル」構想を提示した。その重点は、1)敵の偵察システムの破壊、2)敵の発射システムの破壊、3)敵のミサイル等の兵器の破壊(おとりミサイルなどを使って敵の兵器が標的からそれるようにすることも含む)にある。
米日同盟にとり、紛争が起きれば、西太平洋におけるいかなる海軍作戦もすぐに対抗措置に直面するだろう、という展望は、日本は自国領土を防衛し、米国は日本を攻撃する者を攻撃するという従来の両国の役割分担を再検討すべき必要が出てきたことを意味する。中国の「反介入作戦」が成功すれば、米国の攻撃の威力は鈍ることになりかねない。こうしたことが起きないよう防ぐために日本は何ができるかを考えなければならない。これは、日米間で協議すべき、戦略と作戦の両方に関わる重大なテーマだ、と言っています。
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この論説は常識的で、現在、東アジアでは軍拡が始まっているという事実を適確にとらえています。