2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年4月5日

 米Foreign Affairs誌3-4月号で、Kevin Rudd前豪州首相は、オバマ政権のアジアへの回帰政策は、現在の不安定なアジアの状況から見て、正しい基本戦略であるが、他方、米中協力の枠組みを作る必要があり、定期的首脳会談と軍の交流が重要であろう、と論じています。

 すなわち、米国のアジア回帰(リバランス)は、アジアの戦略的重要性に対するオバマ政権の認識を示すものであり、正しい措置である。近年、中国の興隆と米国の経済、財政の弱体化が、アジア情勢に変化をもたらしているが、リバランスは、まさにこれを修正する措置である。

 中国は、脅威でなくても、不透明さ、不確実性がある。将来、中国が力を持った場合どうなるかは、今からは分からない。

 リバランスは広くアジア各国から歓迎されているが、次の課題は、米中関係をどうするかである。米国としては、軍備強化の選択もあり、あるいは、危機の回避だけに専念して今のままにして置く選択もある。しかし、第三の選択は、米中戦略的競争関係の現実を直視して、中国との協力の枠組みを作ることである。

 その中心をなすのは、定期的首脳会談である。中国との関係においては、首脳同士の直接対話に代わり得るものはない。同時に、キッシンジャーのような役割を演じる人物を任命して、緊急事態や首脳会談間に起こった問題を扱わせることも必要である。また、軍同士の交流も深める必要がある。

 再び上海コミュニケを作ることも考えるべきである。それに対しては、台湾問題に触れざるを得ないという反対もあるが、両岸関係はその後改善されているので、これは解決できない問題ではないかもしれない。

 オバマ政権の第二期のスタートが習近平政権の始まりと重なったのは、チャンスである。歴史は、新しい大国の登場はしばしば世界的紛争を巻き起こすことを示しているが、オバマと習はその例外を21世紀に作ることが出来るかも知れない、と論じています。

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 ラッドは、豪州外務省で中国関係に従事したこともあり、総理在任中、中国問題には高度の見識を示しました。


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