Michael Auslin米AEI日本研究部長は、ギリシャ訪問記をNational Review Onlineに寄稿し、現地で観察したギリシャの経済、社会状況に関して、以下のように述べています。
すなわち、民主主義は、その誕生の地で、四面楚歌の状況にある。約50人のギリシャ人CEOや有識者の会合で、ギリシャの民主的政府は、自国の経済問題を解決できると思うかと尋ねると、誰も手を挙げなかった。では、ギリシャの経済危機を解決できる他のより良い政治制度があると思うかと聞くと、皆、否定的だった。より困惑したのは、70~80%のギリシャ人が、「自由が奪われている。」と感じていることだ。今月公表された失業率が過去最高の27.2%と聞くと、迷宮から抜け出したいというギリシャ人の気持ちはよく分かる。
ギリシャの街には、疲弊した空気が蔓延している。ギリシャのGDPは2012年に約6.5%落ち込み、本年は更に4.5%下降すると予測されている。
しかし、実際の失業率が35%に達すると言われていても、街には常に賑わいがあった。どうやってやりくりしているのか、人々に尋ねてみた。ある者は、節約していると言うが、多くは、実は、統計上は入らないが働いていて税金を納めていないと言う。また、他の者は、年金生活者である両親のすねをかじって生活しているので、家賃も要らないし、働いても税金を払わない。
皆、ギリシャの経済システムが機能不全に陥りつつあることは感じているが、誰も、競争力の回復、イノベーション促進やグローバル経済の中のギリシャ経済に関して語ろうとしない。若者たちは、怒りとともに無関心の表情を示し、自分達が出来ることはなく、成り行きに任せるしかないと思っているようだ。古代ギリシャの批評の精神と今日の冷ややかな態度の対照性に複雑なものを感じる。
政治に関しては、複数の者が、現在の中道右派のサマラス政権の方が、前のパパンドレオ社会主義政権より、ずっと良いと答えた。しかし、それでも、殆どの人は、現政権で、持続可能な経済回復を達成できるとは思っていない。良くても、ギリシャ経済が崖っぷちから落ちることはないだろうとの慎重な楽観主義程度であり、それも、失業率の最悪記録が出ると、打ち消されてしまう。このような不満が、極右政党への支持を集める1つの原因にもなっている。