そして、現代風ディオゲネスが街中に溢れるには、もう1つ理由がある。ある金融の専門家が言った。「最早ギリシャには主権がない。ギリシャの将来は、その債権者が決めるのだ。」実際、アテネでは、欧州中央銀行、IMF及びECとのトロイカ交渉が行なわれたが、360億ドルをギリシャに追加支援するという合意には至らなかった。ギリシャには既に2010年来、約300億ドル融資されている。見返りに、ギリシャ政府は、15万人の公務員削減その他予算削減措置を約束した。
ギリシャは途方もなくさまよっている。国家が何処に進むかも分からず、次にどんな危機が来るとも分からない。それでも、ギリシャ人が希望を託すのは、観光シーズンの到来である、と述べています。
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上記は、アジアの安全保障を専門とするオースリンによる、ギリシャ訪問記です。彼にとっては専門外でしょうが、英国の詩人Keatsの名詩、Ode on a Grecian Urnをもじった、彼の巧みな文章力で、ギリシャ問題の現状がよく理解できる論説になっています。冒頭の、民主主義政府は問題解決能力に欠けるが、だからと言ってそれに代わるより良い制度があるわけではない、という下りは、チャーチルの民主主義は最悪の制度だが、最もましな制度である、という言葉を想起させます。
ギリシャ危機以来のユーロ危機は、欧州経済に長引く停滞をもたらしました。上記記事にもあるように、若年層を含む失業率の上昇で、ユーロ崩壊の前に、政治、経済、社会システムが崩壊の危機に直面しています。EUは、ユーロ危機の原因は財政赤字にあるとして、緊縮財政によって危機の解決を図ろうとしましたが、それがかえって景気低迷、失業率の悪化を招いたという側面もありました。
それでも、上記でオースリンが指摘するように、南欧の人々に明るさがあるのは、家族の支えや非公式の職場、そして何と言っても良い気候があるからでしょうか。
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