三益愛子(1910〜1982年)は戦前に千日前の劇場でデビューしてから上京して浅草で喜劇王と言われたエノケン(榎本健一)の相手役までやった。作家の川口松太郎と結婚してしばらく専業主婦だったが、戦後に芸能界に復帰、38歳で母親役を演じた1948年の「山猫令嬢」から1958年の「母の旅路」まで、いわゆる母もので28本も主演してヒットを続けた。子どものために苦労しぬいて涙ながらにその喜びや悲しみを語る。庶民のオッ母サンの愚痴の味わいにファンは泣きに泣いたのだ。
坂本スミ子(1936年〜)はラテンの歌手から映画にも出演するようになって今村昌平監督の「人類学入門」ととくにカンヌ映画祭グランプリで世界に知られた「楢山節考」で、おなじような庶民のオッ母サンを今村昌平流の激しいリアリズム演出で苦労しながら力演した。
スター女優では池田市出身の有馬稲子(1932年〜)と田中裕子(1955年〜)がいる。有馬稲子は宝塚歌劇団でスターになって映画に迎えられて華やかな存在だった。田中裕子は文学座で女優修業をした。映画では「天城越え」と「いつか読書する日」があふれるような情感で傑出している。(大阪編終わり。次回は長崎県)
◆次回更新は6月15日(月)を予定しています。
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