2024年8月29日(木)

BBC News

2024年8月29日

デイヴィッド・グリッテン、ヤロスラヴ・ルコフ、BBCニュース

国連の世界食糧計画(WFP)は28日、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザ地区で、WFPのスタッフの移動を「追って通知があるまで」一時停止すると発表した。イスラエルが設置した検問所付近でWFPのチームが銃撃を受けたためだとした。

WFPの声明によると、銃撃は27日夕にワディ・ガザ橋で起きた。WFPの装甲車両2台は当時、人道支援物資を積んだ車列を護衛していたという。

車両にははっきりとWFPのロゴなどがついており、「イスラエル側から何度も許可を得ていた」にもかかわらず、車両1台が銃弾の直撃を受けたという。負傷者はいなかった。

BBCはこの件についてイスラエル国防軍(IDF)にコメントを求めている。

WFPの声明によると、「(支援)チームは、ガザ中部へ向かう人道物資を積んだトランクの一団を護衛するという任務を終え、ケレム・シャローム検問所とカラム・アブ・サレム検問所から引き返しているところだった」。

IDFの検問所に向かって移動中だったWFP車両のうちの1台に「銃弾が直撃した」という。

「少なくとも10発の銃弾を受けた。運転席側に5発、助手席側に2発、そのほかの部分に3発。乗っていた職員に身体的被害はなかった」

WFPは、ガザ戦争で保安上の脅威となる事象に見舞われたのは今回が初めてではないが、必要な許可を得ていたにもかかわらず、検問所付近でWFPの車両が直接銃撃されたのは初めてだと付け加えた。

「この事案は、ガザ地区における人道的空間が急速に縮小していることを痛感させるものであり、同地区で増大する暴力行為が、救命支援を届ける我々の能力を低下させている」

WFPのシンディ・マケイン事務局長は今回の出来事は「まったく容認できない」と語った。

「イスラエル当局とすべての紛争当事者に対し、ガザで活動するすべての援助関係者の安全と治安を確保するための行動を直ちに取るよう求める」

国連の高官は26日、イスラエル軍の避難命令を受け、国連の活動を停止したと述べた。だが国連は、ガザでの人道援助活動は継続しているとしていた。

ステファン・デュジャリック国連報道官は27日夕、「我々が仕事をするには極めて、極めて困難な」状況だとしつつ、「我々は今あるもので、できることをしている」と記者団に語っていた。

イスラエルが避難命令、国連の活動拠点など含まれ

イスラエル軍は25日、一部地域に避難命令を出した。対象地域には、国連が主要な活動拠点を置いているガザ中部デイル・アル・バラフ周辺の、イスラエルが指定した人道地域の一部が含まれていたため、国連スタッフは早急に移動しなければならなかった。

イスラエル軍はこの地域で、ハマスの「テロ工作員」に対する活動を行いつつ、民間人を保護するために行動したとしている。

また、国連やそのほかの国際組織が活動を継続できる代替地を探すため、これらの組織と連携しているともしていた。

国連によると、イスラエルとハマスの戦闘が始まって以降、ガザの88.5%の地域に避難命令が出ている。国連は同地区における人道援助の主要提供者兼配給者となっている。

人道地域への避難を余儀なくされているのは推定180万人。人道地域は現在、約41平方キロメートルしか設けられておらず、重要なインフラや基本的なサービスは欠如している。

ハマスは昨年10月7日にイスラエル南部を奇襲し、約1200人を殺害し、251人を人質に取った。これを受け、イスラエルはハマス壊滅を掲げてガザでの報復作戦を開始した。

ハマス運営のガザ保健省は、イスラエルの攻撃でこれまでに4万500人以上が殺害されたとしている。

支援や医療活動に影響

国連の安全保障担当ジル・ミショー氏は、IDFが25日、200人以上の国連職員に対し、デイル・アル・バラフ南部にある事務所や居住場所から退去するよう、期限の数時間前に通告してきたと明らかにした。

国連の人道問題調整事務所(OCHA)によると、国連とNGOの15の施設、国連の倉庫4カ所、淡水化プラント1カ所、デイル・アル・バラフの主要医療施設アル・アクサ病院が影響を受けたという。

「これ以上ないほどタイミングが悪い。来週には大規模なポリオ・ワクチン接種計画が始まる予定で、そのために大勢のスタッフがガザに入る必要があるので」と、ミショー氏は述べた。

ガザで25年ぶりにポリオの感染が確認されたことを受け、国連は64万人の子供を対象としたワクチン接種を計画している。ポリオに感染した生後10カ月の赤ちゃんは、体の一部にまひが残ったという。

国連はワクチン接種を行うため、7日間の人道的な一時休戦を2度実施するよう、戦争当事者に求めている。

IDFは28日に声明で、ハマスの「テロ工作員」とそのインフラに対する「不可欠な作戦」を遂行するため、デイル・アル・バラフとその周辺に避難命令を出さざるを得なかったと説明した。

また、「シェルターや援助物資の集積所、住居など、国際社会の重要施設での活動を維持するため、国際社会と完全に連携し」活動していると強調した。

一方で、「ハマスやそのほかのテロ組織による、相手をあざ笑うような搾取を考慮すると、これらの施設からの避難が必要になる場合もある」とした。

IDFは国連機関やNGOが活動を継続するための代替地を見つけ、代わりの援助ルートを提供するのを助けるための行動を取るとした。

デイル・アル・バラフでは28日、避難民が身を寄せる学校の近くで空爆があり、少なくとも8人のパレスチナ人が殺害されたと、地元の医療従事者は語った。イスラエルの戦車が市街地に前進したとされる南部の都市ハンユニスでは、空爆により11人が殺害されたと報じられている。

(英語記事 World Food Programme halts Gaza staff movements

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c79wr9j29q0o


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