2024年12月20日(金)

Wedge REPORT

2024年8月21日

 東日本大震災をきっかけにして、チャンス・フォー・チルドレン(東京都墨田区)を設立した今井悠介さん(38歳)。これまで、寄付金を原資にした「スタディクーポン」を、6000人以上(総額13億円超)の経済困窮家庭の子どもに提供し、「学び」を支援してきた。このほど、チャンス・フォー・チルドレンでは、小学生の保護者(全国約2000人)を対象にアンケートを実施し、『体験格差』(講談社現代新書)にまとめた。子どもにとって「体験」は贅沢品ではなく、「必需品」である。その理由について聞いた。

子どもは「体験」することによって自分の選択肢を広げていくもの(写真はイメージ画像)(EDWIN TAN/GETTY IMAGES)

体験より学習という
社会通念

 私は兵庫県出身で、小学生の時に阪神・淡路大震災を経験しました。この震災がきっかけで立ち上がった子どもを支援するボランティア団体があり、私も大学生の時に参加していました。この団体では、学習支援だけではなく、例えば、遊びに行きたいとか、避難所などでは制限される中で生じる子どもたちのニーズに対応するため、キャンプなどの体験の場をつくることをしてきました。私自身、ここでの活動を通じて、机の上で知識を得ることだけではなく、自分で体験して人と出会って、その中で学んでいくことが、大きいと知りました。

 私がチャンス・フォー・チルドレンを立ち上げるきっかけとなった東日本大震災の際、目の前の子どもたちから強いニーズがあったのが学習への支援でした。特に受験生はなおさらです。それこそ150人の枠に1700人以上の応募が来るようなニーズがある中で、子どもたちの学びの支援を開始しました。

 それに対して、後回しになってしまうのが、「サッカーをしたい」「音楽をやってみたい」などという体験ニーズです。親に「どうしても今はできないからごめんね」と言われたり、親が頑張っている姿を見ていたりするからこそ、子どもは素直な気持ちを言えず、自分を押し殺してしまう様子が、災害後、進学や学習という切り口から関わっていく中で見えてきました。


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