2024年5月5日(日)

医療神話の終焉―メンタルクリニックの現場から

2023年8月31日

 9月1日は、児童思春期のこころの健康に関わる者にとっては、要注意の日とされている。この日に自殺が増えるからである。

 内閣府は、厚生労働省の過去40年間の「人口動態調査」をもとに独自に集計し、18歳以下の日別自殺者数をまとめている(『平成27年度自殺対策白書』)。それによれば、365日のなかでずば抜けて自殺が多かったのが9月1日で、平均130人であった。

 この日以外には平均100人を超える日はなく、一方で、1月1日のようにわずか20人の日もあった。全体のトレンドを見ても、1学期が始まる4月上旬、ゴールデンウィーク後の5月上旬、3学期が始まる1月上旬に急激に上がり、その時期が過ぎるとまた下がることを繰り返していた。

 学校に行くことがプレッシャーになって、それが自殺の誘因となっている、そのことは疑いようがない。

(show999/gettyimages)

義務教育でも、学校に行く義務はない

 行きたくなければ、行かなければいい。学校は行きたい人が行くところである。

 義務教育だからといって、別に、子どもには学校に行く義務はない。このことは、子どもたちは誤解しているかもしれないが、「義務教育」とは、国民がその保護する子どもに一定の教育を受けさせることを義務とするという意味である。保護者に対しては、一定期間子どもたちを就学させる義務を課し、国や自治体に対しては、学校を設置し、無償制などの教育を受けるうえでの条件を整備する義務を課している。

 いずれにせよ、義務は大人たちに課せられているのであって、子どもたちに、ではない。子どもたちのもつのは義務ではなく、権利である。

 これは「家が貧しく家計が厳しいとか、家業が忙しいといった理由で、子どもを学校に行かせる代わりに、仕事をさせるようなことは、してはならない。子どもたちには、学校で学ぶ権利があるのだから」という意味である。学校に行きたがらない子どもを、むりやり学校に行かせなければいけない義務はない。


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