2024年12月9日(月)

Wedge REPORT

2023年7月24日

 毎年夏の初めに、新聞をはじめメディアで多く取り上げられる「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」。その後1年間に政府が優先的に取り組む施策とその目的が記されたもので、記載された政策は一定の実現性が見込まれることから、広く注目されている。

(SeventyFour/gettyimages)

 フランスから子育て環境に関する情報発信をする筆者も、毎年春から「骨太の方針」を待ち構えている一人だ。特に今年春にこども家庭庁が発足して以来、政府による「異次元の少子化対策」が強くアピールされたので、その内容が例年よりも気になっていた。公表の報道が出ると、すぐに参照した。

 デフレ経済からの脱却、未来への投資の拡大、構造的賃上げ、こども・子育て政策の抜本的強化……ポイントが列挙される中、筆者の目に止まったのは文書の後半部分。『5.経済社会の活力を支える教育・研究活動の推進 (質の高い公教育の再生等) 』の中の、以下のくだりだった。

安心して柔軟に学べる多様な学びの場の環境整備を強化する。非認知能力の育成に向け、幼児期及び幼保小接続期の教育・保育の質的向上、豊かな感性や創造性を育む文化芸術、スポーツ、自然等の体験活動や読書活動を推進する。 (PDFのP43)
出典:内閣府「経済財政運営と改革の基本方針 2023」

 このような「多様な学び」が実現すれば、日本の子どもたちに有益であることは間違いない。そう嬉しく思うと同意に、反射的に考えた。

 「これを、誰がやるのだろう?」

 今の日本では、保育士も教師も、過重労働と人手不足が危惧されている。この現状で「文化芸術、スポーツ、自然などの体験活動や読書活動」を推進して、誰が担うと想定されているのだろうか。

 そう考えたのには、もう一つの理由がある。筆者はフランスで子育てをしており、公的支援でわが子に「文化芸術、スポーツ、自然などの体験活動や読書活動」の機会がある。そしてフランスでは、その担い手が明確に職業化されているからだ。

多様な学びは「子どもたちの自由時間」で提供

 フランスで〝多様な学び〟を担うのは、「アニマトゥール」という、児童福祉系の専門職である。学校休みや放課後など、子どもたちの自由時間の環境・活動作りと、団体生活の見守りを仕事とする。


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