2024年11月21日(木)

Wedge REPORT

2023年2月25日

 日本全国の中学校・高校の、理不尽な校則に関するニュースが目につく昨今。ポニーテールやツーブロックといった社会で一般的な髪型の禁止、真冬にもコートの着用を不可とするなど、これが21世紀なのかと目を疑うルールが並ぶ。そのような規則に「ブラック校則」の呼称を冠した報道が注目を集めている(この色を用いた呼び名に個人的には賛同しないが、実用例の紹介として用いる)。

(metamorworks/gettyimages)

 筆者はフランスのパリ郊外に住んでおり、現地の公立中学校に通う10代前半の息子がいる。そして義務教育の始まる幼稚園から現在に至るまで、彼の髪型や服装を、施設側からの「禁止」「不可」の規定に従って選んだ経験はほとんどない。

 この国の学校はまず私服登校が原則で、服装・髪型に関する規定はごく少ないからだ。世俗主義の観点から公立校では特定の宗教への信仰を誇示する装いを禁止しているが(教育法典 L141-5-1条)、それ以外は学校であっても、安全面で問題がなければ「個人の表現の自由を侵害する規定」は最小限にするべし、との社会認識がある。

 服装既定の少ない環境で、フランスの中学生・高校生たちは野放図な学生生活を送っているのかというと、また違う。尊重すべき校則はあるが、そもそも自由を制限しない範囲で検討されているので、逸脱すること自体が少ない。

 その内容は生徒代表の合意のもとで制定され、理不尽なルールになり得ない仕組みと運用がある。そしてその仕組みと運用は、国が法によって定めているのだ。

 筆者がその仕組みに興味を抱いたきっかけは、昨年のある朝。「今日は1時間帰宅が遅れる」と言う息子に理由を問うと、こんな答えが返ってきた。

 「校則違反を繰り返した同級生を、どう処分するか決める『懲戒評議会』に、クラス代表で出席するから」

 その『懲戒評議会』には、教員・保護者・生徒の各代表が参加する。そして校則を定め改定する『学校管理評議会』という組織がまた別にあり、そこにも教員・保護者・自治体の代表者と並び、生徒代表が参加することになっているのである。

 かように「ブラック校則」があり得ないフランスの校則文化は、日本の校則事情を客観視して考える一助として役立った。ここで読者の皆さんにもお伝えしよう。


新着記事

»もっと見る