2024年5月7日(火)

Wedge REPORT

2023年2月25日

 そして生徒の側からも、力強いアクションが生まれている。岡山市の県立興陽高校では昨年来、ポニーテールやツーブロックといった髪型の禁止を含む校則を疑問視した生徒会が、その社会的・客観的な妥当性を問うため、周辺企業にヒアリングを行った。その調査結果をもとに生徒会は新校則を編み、学校側に提案。ジェンダーフリーを含めた新校則が生徒主導で採用された経緯を、毎日新聞TBSなどの全国メディアが大きく報道している。

 またこれまで客観的に視覚化される機会のなかった全国の校則を、データベース化して公表する「全国校則一覧」も興味深い。運営の非営利団体には現役高校生が含まれ、代表の神谷航平さんもその一人だ。自治体への情報開示請求などで集め掲載された校則は、2023年2月現在で1491校にも上る。

「ブラック校則」報道から考えるべきこと

 これまで何十年も動かなかった校則事情が話題になる背景で、今の日本には、「変えたい」と願う現役中高校生たちとそれに応える教育関係者の意思と行動が見られる。このような生徒の学校運営への参加が「民主主義の習得の場」として機能することに大津氏は前向きな見解を抱いている。

 「急にすべてを変えるのは難しいでしょうが、まずは生徒参加を前提とした校則の見直しのルール化・スケジュール化が進むと良いのではないでしょうか。『校則は変えられる』と知らない生徒たちも、日本全国にはまだまだ多いと思います」

 校則の妥当性を問うことは、中学生 ・高校生のうちから、共同体のルールや運営を自主的に考える貴重なきっかけと言える。それを一過性のニュースとしてだけ消費するのはあまりに惜しい。

 明日を担う学生たちが民主主義の実践に挑戦する姿を認め、それを応援しながら、上の世代も自省の機会とするべきだろう。その理不尽な校則を変えられないまま学校を出て大人になったのは、他でもない私たちなのだから。

   
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