2024年7月16日(火)

Wedge REPORT

2023年7月24日

 アニマシオンの場のあり方は多様だ。授業前や放課後の短時間の学童保育的なものから、夏休みに終日・数週間開催される通いの児童クラブ、宿泊付きのサマーキャンプ、行楽地でのキッズクラブまで多岐に渡る。

 放課後や季節休みの間、通常の生活圏で定期的に受け入れる施設は、自治体や非営利団体が事業主体となって運営することが多い。その際は「地域教育計画」を作成し、国の関係局に届け出る規則となっている。

 「地域教育計画」による受け入れは、国や自治体が運営費を拠出し、親が利用料を応能負担する。場所は自治体所有の小学校や公立施設。事業主が誰であっても、指導員は職員として、国の最低賃金(SMIC)以上の契約で雇用される。定期受け入れ施設では、フルタイム正規雇用の職員も多い。

 そして公的な福祉事業ゆえに、その運営に関しては、設備や指導員配置基準の規則がある。たとえば放課後の場合、6歳以上の子ども14人につき大人1人。休日の場合は6歳未満の子ども8人につき大人1人、6歳以上の子ども12人につき大人1人が、「これより下回ってはいけない」最低基準だ。

「多様な学び」を提供する多様な人々

 遊びやレジャー、スポーツを活動の軸とする、フランスの自由時間支援。指導員には9種類の資格があると前述したが、その初等資格BAFAは16歳から、合計1カ月ほどの研修期間を経て取得できる。研修参加に年齢以外の要件を設けないため、学業の道に進まなかった人々の「手に職」の一つの玄関口にもなっている。

 初等資格以降の8種類の資格は、高校卒業相当、高等教育課程2年・3年修了相当など、学歴のように積み上げていける段階方式で編まれている。上級資格は管理職登用の条件にされ、青年期に学業では成功できなかった人材でも、アニマシオン業界ではプロジェクトリーダーや施設長になれる。わが子がお世話になった施設でも、施設長は高卒資格を持たないながら、アニマシオン系統で高等教育課程3年修了相当の資格を得た40代の女性だった。

 またこれらの9種類の資格は、演劇などの文化系専門課程やプロスポーツ養成機関でも、取得が推進されている。スポーツ・カルチャーの道でキャリアを積んでいる途上の人材や、そこで生計を立てるには及ばなかった人々が、別の形で職能を生かすキャリアパスとしても設計されているのだ。

 このような仕組みから、アニマトゥールにはスポーツ・文化に素養や関心のある人材が集まりやすい。そして各人の素養や経験が、結果的に、子どもたちの自由時間の活動を多様にする。と同時に、学歴以外の道で経験と職歴を積み、社会で認められる姿によって、人生の多様さを示す役割も担っている。ちなみにアニマシオン系の資格には児童関連の犯罪履歴が紐づけられ、全国ネットワークで事業主に共有されるという、犯罪者のキックアウトの仕組みがあることを言添えたい。


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