イスラエルの議会は28日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のイスラエル国内およびイスラエルが占領する東エルサレムでの活動を3カ月間禁止する法案を可決した。
UNRWA職員とイスラエル当局者との連絡も禁止されるため、パレスチナ・ガザ地区やイスラエルが占領するヨルダン川西岸での活動も大きく制限されることになる。
UNRWAがガザに支援物資を運び入れるには、同地区に通じるすべての検問所を管轄するイスラエル軍との連携が不可欠。UNRWAは、ガザで活動する最大の国連機関でもある。
さらに、UNRWA職員はイスラエル国内での法的免責を剥奪(はくだつ)されるほか、東エルサレムにある本部も閉鎖される。
法案を議会に提出したユリ・エデルシュタイン外交・安全保障委員長は、UNRWAが「テロ活動の隠れみの」として使われてきたと非難した。
「テロ組織(ハマス)とUNRWAの間には深いつながりがあり、イスラエルはこれを放置することはできない」と、エデルシュタイン委員長は述べた。
アメリカやイギリス、ドイツをはじめとする各国が、この動きに深刻な懸念を示している。デイヴィッド・ラミー英外相は「まったく間違っている」と述べた。UNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長は、「パレスチナ人の被害をさらに深めるだけだ」と語った。
米国務省は、UNRWAはガザにおける人道支援物資の配布に「重要な」役割を果たしていると述べた。現在、ガザに住む200万人超のほぼ全員が、UNRWAからの支援やサービスに頼っている。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「イスラエルに対するテロ活動に関与したUNRWAの職員は責任を負わなければならない」と説明。一方で、「ガザでは引き続き、継続的な人道支援が提供されなければならない」と述べた。
ネタニヤフ首相はソーシャルメディア「X」で、「我々は、イスラエルの安全保障を脅かすことなく、イスラエルがガザ地区の民間人に対する人道支援を継続できるよう、国際的なパートナーと協力していく用意がある」と述べた。
イスラエルは過去数十年にわたり、UNRWAの存在に反対してきたが、その傾向はここ数年で激化している。
イスラエルは、UNRWAの職員がガザのイスラム組織ハマスと結託していると指摘。19人の職員が、昨年10月7日のハマスのイスラエル襲撃に参加したと主張している。
国連はイスラエルの主張を調査し、疑惑を持たれていたうちの9人を解雇した一方で、イスラエルは広範な疑惑についての証拠を示さなかったとしている。UNRWAは、ハマスとのやりとりは職務遂行のためだけだと述べている。
UNRWAは数十年にわたり、ガザのパレスチナ人に医療や教育を含むサービスや支援を提供してきた。
昨年に戦争が始まって以来、生存を援助にほぼ全面的に依存しているガザ住民に人道物資の供給を確保する取り組みにおいて、UNRWAの現地での存在は極めて重要な役割を果たしてきた。
UNRWAのラザリーニ事務局長は、この禁止措置を「前例のない」ものと非難。「国連憲章に反し、国際法の下でのイスラエル国家の義務に違反する」と述べた。
また、ガザの人々はすでに「地獄のような状況」に耐えていると述べ、UNRWAの活動禁止によって「65万人以上の少女と少年が教育を受けられなくなり、子どもたちの世代全体が危険にさらされることになるだろう」と語った。
イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区(東エルサレムを含む)とガザ地区では、約250万人のパレスチナ人がUNRWAに登録されている。
ガザ北部では、イスラエル軍がハマスの戦闘員に対して軍事作戦を行っているなか、数十万人がますます絶望的な状況下で暮らしている。
国連のフォルカー・トゥルク人権高等弁務官は25日、「イスラエル軍は、住民全体を空爆や包囲、飢餓の危険にさらしている」と述べた。
多くのパレスチナ人は、イスラエル軍がガザ北部で「降伏か飢餓か」の計画を実施していると考えている。推定40万人の民間人全員が南部に強制的に移住させられ、残ったハマス戦闘員が包囲されている。
イスラエル軍は、そのような計画はないと否定しており、民間人が危険にさらされないよう確認しているとしている。
ハマスは昨年10月7日にイスラエル南部を襲撃し、約1200人を殺害、251人を人質としてガザに連れ去った。
ハマスが運営するガザの保健省によると、これを受けて始まったイスラエルの軍事作戦により、これまでに4万2710人以上が殺されている。
(英語記事 Gaza aid fears as Israel bans UN Palestinian refugee agency)