2024年11月29日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年11月29日

 ウォールストリート・ジャーナル紙は、10月28日付けで、イスラエルとイランとの攻撃の応酬を踏まえて、イランが核保有に向かうのではないか、その事態に対し、イスラエルと米国はどのように対応するのかを論じたウォルター・ラッセル・ミード(バード大学教授)による論説‘How Would the U.S. Handle a Nuclear Iran?’を掲載している。概要は次の通り。

(grynold/fongfong2/gettyimages)

 イスラエルは、10月26日のイラン攻撃に際して、イランの核施設や石油精製施設を避けることによって米国と湾岸アラブ諸国から評価を得た。イスラエルの空軍機はイランの防空システムを突き破ったのみならず、ミサイル製造施設に深刻な打撃を与えた。それにより、イスラエルはイランの戦略的な脆弱性を把握しており、いつでも望むときにそれを破壊することができるとのメッセージを発した。

 このイスラエルのイラン攻撃は、1973年の第四次中東戦争(ヨム・キプール戦争)以来の、中東におけるパワー・バランスの要点を示すものである。すなわち、米国の軍事技術と情報収集能力へのアクセスを持つ者がロシアに頼っている軍勢を簡単に打ち破ることができるということである。ただし、軍事力は実現可能な政治的計画の中に位置づけられてはじめて意味を持つものであり、戦争で勝利したからといって平和を実現できるとは限らない。

 イスラエルがイランとその同盟者に対して損害を受けることなく攻撃できる能力を持っていることは、イランの体制の威信を傷つけ、イランの軍事力の評価を下げ、イランの同盟体制を弱めるものである。ここで重要な論点が二つある。

 一つは、イランが通常戦力における劣勢を挽回するために核保有を目指す姿勢に転じるかどうかである。もう一つは、もしそうなった場合、イランの核兵器への恐れから、米国は戦争に関与することを覚悟の上で、イスラエルを支援するかどうかである。

 核保有に転じることはイランにとって実現は容易であり、戦略的にも以前にも増して必要性が高くなったと思われる。イランは、これまでもウラン濃縮、核爆発装置の設計、ミサイル製造を進めてきており、核能力保有の瀬戸際まで来ていた。今回、イスラエルがイランとその代理勢力に対して攻撃を加えたことで、イランが非核分野でイスラエルに対抗することの限界を示したと言える。

 一方、米国が核を持とうとするイランをどうするのかは、複雑な問題である。米国において、中東で新たな戦争に関与することを望む者は少ない。


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