2024年12月5日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年11月11日

 Economist誌10月19日号は、国際社会がイスラエルのイランへの報復が中東全体を戦乱に巻き込むかどうか固唾を呑んで見守っている中、バイデン政権は対イラン制裁を緩和し、イラン側も制裁をかいくぐる方法を発達させているので米国が中東の混乱を防ごうとしてもイランにもイスラエルにも圧力を行使出来なくなっている、とする社説‘How the Biden administration botched America’s sanctions against Iran’を掲載している。要旨は次の通り。

(gettyimages/Ruma Aktar)

 10月初めにイランが180発以上のミサイルでイスラエルを攻撃し、今度はイスラエルが報復する番であり、世界は固唾を呑んでその成り行きを見守っている。米国にとってはイスラエルに抑制的対応を求め、エスカレーションを限定し、イランの有害な影響力を抑制し、イランが核武装しないよう出来るかどうかが問題となる。残念ながらEconomist誌の調査によれば、バイデン政権は、そのための主要手段の一つを役に立たなくしている。

 2018年、トランプ前大統領は、イランの核開発計画を止める合意(JCPOA)から離脱し、イランのイスラム革命体制を罰し、その代理勢力とテロリストへの財政支援を止めさせるために前例のない程厳しい経済制裁をイランに課した。米国は米国市民に対してイランとの取引を禁止し、イランの通貨を扱うことを禁止した。さらに、「二次制裁」を復活させ、イランと取引を行った第三国の個人、組織も罰することにした。

 ところが、バイデン大統領はしばしば、制裁の実施を緩めて来た。彼は、イランを(JCPOA再開)交渉のテーブルに復帰させることに熱心であり、また、イランの(原油輸出を)止めるとロシアのウクライナ侵攻で高騰している原油価格をより引き上げるのではないかと心配した。

 バイデン政権は国外で凍結されている資産をイランが使えるように外国企業に対して制裁の適用除外を認め、イランの原油の密輸出にも目をつぶって来た。このため経済制裁の効果は絶えず損なわれ、その結果、イランと中国はより緊密になった。9月、イランは180万B/Dの原油を輸出したが(大半が中国向け)、これは過去6年間で最高の輸出水準である。


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