2024年11月7日(木)

教養としての中東情勢

2024年11月7日

 米国のトランプ前大統領のホワイトハウス復権が決まったことで戦乱が拡大する中東に不安と喜びが交錯している。イスラエルのネタニヤフ首相は狂喜し、サウジアラビアのムハンマド皇太子も歓迎。ガザ戦争の一方の当事者パレスチナ人は「見捨てられる」と意気消沈気味だ。イランは包囲網が再び強まることを警戒しており、ペルシャ湾は波高しだ。

24年7月にトランプ氏(左)宅を訪れたネタニヤフ首相。トランプ復権に喜びを見せる( Anadolu / gettyimages)

いの一番に祝意の電話をかけたネタニヤフ

 トランプ氏の当選で最初に祝意の電話を掛けたのはイスラエルのネタニヤフ首相だ。首相はこれに先立って「歴史的に最も偉大な大統領の復帰だ。大勝利だ」と浮かれたような声明を発表。その後に直接電話し、イスラエルの安全保障と敵対するイランの脅威について協議したという。

 ネタニヤフ氏は現職のバイデン大統領とはガザ戦争や隣国レバノンへの戦線拡大、イランとの交戦をめぐって対立し、冷え切った関係だ。トランプ氏とは1期目の政権時代、深夜に何度も電話で話すなど親しい関係だったが、バイデン氏が前回の選挙で当選した際、祝意を送ったことにトランプ氏が激怒、一時関係が冷却した。

 ネタニヤフ氏は汚職容疑で裁判中の刑事被告人の身でもあるが、昨年のイスラム組織ハマスの奇襲攻撃を察知できず、その責任を厳しく問われ、ガザ戦争が終われば首相を辞任せざるを得ない。このため、イスラム組織ハマスとの戦闘を長引かせる一方で、親イラン組織ヒズボラを叩くためとして、レバノン全土を爆撃するなど戦線を拡大している。

 イランに対しても、シリアのイラン大使館を爆撃し、ベイルート空爆でヒズボラの指導者ナスララ師を殺害、またテヘランに滞在中だったハマスの指導者を「暗殺」(イラン側発表)した。こうした挑発にイランが弾道ミサイル攻撃を2回行い、イスラエルも反撃、「中東大戦」への緊張が高まった。

 イスラエルの攻勢に「待った」を掛けてきたのがバイデン氏だったが、トランプ氏が就任する来年1月20日以降はこうしたタガが外れそうだ。トランプ氏はガザ戦争について「さっさと片付けろ」と発言しており、ネタニヤフ首相に干渉せず、大きなフリーハンドを与えるとみられている。


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