2024年11月7日(木)

教養としての中東情勢

2024年11月7日

 中東専門誌などによると、「アブラハム合意」にはトランプ一族のペルシャ湾岸での利権も絡んでいる。トランプ一族が経営する企業トランプ・オーガニゼイションは、合意後にオマーンでゴルフ場兼住宅建設のライセンス契約やサウジ西部の大都市ジッダでの高級ホテル建設契約を結んだ。クシュナー氏はサウジなどから巨額の資金を集めて投資会社を設立した。

トランプ・オーガニゼーションが開発を進めるサウジアラビアのジッダ(Ayman Zaid/gettyimages)

イラン、追い詰められれば核爆弾製造も

 トランプ氏復活を苦々しく思っているのはイランだろう。米軍は20年1月、イランの英雄だった革命防衛隊コッズ部隊の司令官ソレイマニ将軍をドローンで暗殺したが、その命令を下したのはトランプ氏だ。しかも核合意を一方的に離脱して経済制裁を強化した張本人だ。イランは核合意の再建を目指していたが、その目論見は完全に潰えた。

 トランプ氏は「アブラハム合意」の拡大を目指すとともに、合意に参加したメンバーでイラン包囲網を再構築したい考えだが、追い詰められたイランが核爆弾製造へ舵をきる恐れもある。イランは濃縮度60%のウラン生産を進めており、数週間で核爆弾2、3発を製造可能とみられている。トランプ氏の返り咲きは中東の緊張を一段と高めかねない。

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