アメリカ司法省は18日、ニューヨークに住む中国系アメリカ人の60歳男性が、中国政府が無許可の「在外警察署」を開設することに関して、中国政府の工作員として活動するため共謀していたと認めたと発表した。
アメリカ市民が、中国政府のためにアメリカで秘密警察署を開設・運営していることが発覚したのは、これが初めてという。
司法省によると、陳金平被告と盧建旺被告は共謀し、中国公安部のためマンハッタンのチャイナタウン地区で2022年初めに、警察署を開設・運営したという。
中国政府と関係するこうした「警察署」の存在は、53カ国100カ所以上で報告されている。人権団体は、中国当局がこれを利用し、外国在住の中国人を脅迫・監視していると非難している。
しかし中国は、こうした施設は警察機関ではなく、在外国民に行政サービスを提供するものだと主張している。
司法省によると、マンハッタン・チャイナタウンでラーメン店の上階フロア全体を占めていたは拠点は確かに、中国国民の運転免許証の更新など基本的なサービスを提供していたものの、同時にアメリカに住む民主化活動家の居場所などを特定するため、中国政府を支援していたという。
司法省のマシュー・オルセン次官補は、中国政府が外国でこうした無許可の「警察署」を運営しようとするのは、「アメリカの主権を明確に侮辱するもので、我々のコミュニティーへのこのような危険は決して容認できない」と述べた。
この警察署は、連邦捜査局(FBI)が捜査を開始後、2022年秋に閉鎖された。
しかし司法省によると、両被告は捜査着手を知った際に中国公安部の担当者と交わしたテキストメッセージを削除したという。
両被告はどちらもアメリカ国籍を保有しており、昨年4月に逮捕された。
司法省によると、陳被告は18日、中国の工作員として活動するため共謀した罪を認めた。来年の量刑言い渡しで、最大5年の禁錮刑を言い渡される可能性がある。
FBI国家安全保障局のロバート・ウェルズ局長補佐は声明で、陳被告が罪状を認めたことは、「中国共産党を批判する者を中国政府が脅迫し、嫌がらせをはたらき、威圧するために行っている陰湿な対応を、赤裸々に露呈するものだ」と述べた。
盧被告は無罪を主張し、公判開始を控えている。検察当局は同被告が、中国からアメリカへ避難したとされる人を無理やり帰国させるために嫌がらせを重ねたとしている。さらに、カリフォルニア州で民主化活動家を特定するため、中国共産党に協力したという。
陳被告の逮捕時にアメリカ当局は、このような在外警察拠点について立件に乗り出すのは初めてだと説明した。
オルセン次官補は、アメリカ当局は「弾圧行為をアメリカでも実行しようとする中国当局に協力する者を、今後も追及し続ける」と述べた。
今年9月には、ニューヨーク州知事の補佐官だったリンダ・サン被告が、中国政府の利益に奉仕するためにその地位を利用したとして起訴された。被告はその見返りに、旅行などの便宜供与を受けていたとされる。
司法省は昨年4月、中国公安部の関係者34人が偽のソーシャルメディア・アカウントを使用して在米の中国人反体制派に嫌がらせを重ね、中国政府のプロパガンダを広めたとして起訴している。
(英語記事 Man admits running secret Chinese 'police station' in NYC)