2024年12月20日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年12月20日

 2024年11月26日付ウォールストリート・ジャーナル紙は、「トランプが関税のこん棒を振るう。輸入への課税の脅しは外交と国内政策のあらゆる目的への梃子になるだろう」との社説を掲載している。

(donvictorio/gettyimages)

 トランプは、既に政治、外交目標達成への万能のこん棒として関税を使っている。これは彼の2期目のやり方であり、市場はこれに慣れなければならない。

 11月25日、トランプはメキシコとカナダからの全ての商品に25%関税を、中国からの輸入に新しく10%関税をかけると述べた。彼はカナダとメキシコへの課税について「この関税は特にフェンタニールのような薬物、そして不法な外国人が我が国に入ってくるのが止まるまで有効である」と書いた。

 指摘すべき第1の点は、トランプの関税は経済的理由に基づいて正当化されるものではないということである。この関税は不法移民とフェンタニール密輸を減らすとのトランプの選挙公約の実施のためになされる。

 トランプは米国の国内問題を解決する手助けをしないならば、経済的害を与えると二つの隣国を脅しているのである。今の希望的解釈は、トランプが交渉戦略として関税を使っているというものである。彼らが薬物と人々の流れを減らす様に行動すれば、トランプは脅しをやめ、国内で政治的勝利を主張するだろう。

 問題はこの戦略には付随的な損害がありうることである。米国の自動車産業は競争力をもつために国境をまたぐ貿易に依存している。車の部品と原材料は車が組み立てられる際に北米の国境を行き来する。

 各国境越えに25%の関税が掛かると、価格は上昇し、米国の雇用は打撃を受ける。一時、フォードの株が2.6%、GMの株が9%も関税のニュースで下がったのは偶然ではない。


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