2024年12月20日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年12月20日

 その上、報復の潜在的リスクがある。メキシコのシェインバウム大統領はトランプにフェンタニールと移民について話し合うことを提案した。しかし彼女は米国の輸出品に対する関税で対応する用意があるとも述べた。

 トランプの関税がもし導入されれば、トランプが第1期目に交渉・署名した米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を破壊するという問題がある。2019年、トランプはUSMCAが「米国が結んだ最善で最も重要な貿易取り決めになる」と述べた。

 もし彼が短期的政治的必要からこれを破壊すれば、彼は世界中に彼の、また米国の条約の言葉は信じられないとのメッセージを送ることになる。中国はもっと頼れる輸出市場の約束で好意を得ようとするだろう。同盟国を罰するために貿易を使うことは近視眼的である。

 またトランプが関税を世界の貿易システムを作り替える梃子として見ている可能性もある。その場合、彼は米国と外国の企業がほぼ全てを米国で作るように強制するために関税の高い壁を作ろうとするだろう。議会は彼にそう言う権限を与えないことが賢明だろう。

 トランプは関税マンとして選挙運動をしてきた。乱暴な運転に対して準備すべきである。

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トランプとメキシコのシェインバウム大統領の電話会談

 この社説は、トランプが就任初日にカナダとメキシコの輸入品に対して25%、中国からの輸入に10%の関税を課すとSNSで宣言したことを厳しく批判したものである。

 カナダとメキシコは、これに反発している。

 メキシコのシェインバウム大統領は、トランプと電話会談をして、薬物と移民の米国への流入を抑えるようにメキシコ側の措置を強化すると述べたようであるが、トランプが高関税賦課を取り下げたとの事実はない。逆に、自分が高関税措置で脅した結果、メキシコが必要な措置を講じることになったとSNSへの投稿で自慢している。


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