ジェシカ・パーカー・ベルリン特派員
米富豪イーロン・マスク氏は9日、ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への支持をさらに強め、アリス・ワイデル共同党首とのライブチャットを開催した。
74分にわたる対談では、エネルギー政策、ドイツの官僚制度、アドルフ・ヒトラー、火星、そして人生の意味について幅広く議論された。
マスク氏はドイツ国民に対し、次期選挙でAfDを支持するよう明確に呼びかけた。
マスク氏はこのところ、欧州各国の内政への関心・介入を強めている。
マスク氏がドイツの連邦選挙に干渉しているとの非難を受けるなか、この対談に向けてはかなりの準備が行われていた。
対談は英語で行われ、マスク氏が所有するXのプラットフォームを通じ、AfDが国際的な聴取者にアピールする機会になったとも言える。
マスク氏とドナルド・トランプ次期米大統領との親しい関係を知っているワイデル氏は、トランプ次期政権への支持を表明することを忘れなかった。
ワイデル氏は、AfDは「保守的」な「リバタリアン(自由至上主義者)」だと主張。主流メディアによって過激派として「否定的に描かれている」と述べた。
AfDの一部は、ドイツ当局によって正式に右翼過激派に指定されている。
BBCニュースによる昨年の調査では、党の一部の人物と極右ネットワークとのつながりが明らかにされた。また、党の強硬派の一人であるビョルン・ヘッケ氏は、禁止されているナチスのフレーズを使用したとして昨年、罰金を科された。同氏はそれを意図的に行ったことを否定している。
対談の中でワイデル氏は、ヒトラーが実際には「共産主義者」であったと述べた。ヒトラーは第2次世界大戦中にソヴィエト連邦を侵略し、顕著な反共主義で知られている。
「彼は保守的ではなかったし、リバタリアンでもなかった。彼は共産主義者で、社会主義者だった」と、ヴァイデル氏は述べた。
また、ヒトラーを「反ユダヤ主義の社会主義者」とも表現した。
このほか、ドイツの悪名高い官僚制度や、「狂気の」原子力放棄、減税の必要性、言論の自由、そして「ウォーク(woke、社会問題への認識が高いこと。保守派がリベラル派をやゆする際に使うことが多い)」について、ワイデル氏とマスク氏は意気投合し、時にはくすくすと笑い合った。
一方、ワイデル氏がマスク氏に神を信じているかと尋ねると、シュールな時間が流れた。
マスク氏はこれに対し、「宇宙をできるだけ理解したい」と考えているため、その考えに対してオープンだと述べた。
このやり取りは、多くの人の予想にはなかったに違いない。
ウクライナへの武器支援にも反対しているAfDは、2月23日の総選挙に向けた支持率調査で2位に着けている。
しかし、他の政党が協力しないため、政権を取ることはできないとみられる。
それにもかかわらず、マスク氏はヴァイデル氏を「ドイツを率いる候補者」として称賛している。
マスク氏は、ベルリン郊外にある巨大なテスラ工場など、ドイツへの多額の投資を理由に、同国政治への介入を正当化している。
また、AfDを極右とする評価を否定し、以前には社会民主党のオラフ・ショルツ首相を「愚か者」と呼んでいた。
ショルツ首相は政権を維持する可能性が低いと見られているが、マスク氏の攻撃について「冷静でいる」と主張している。