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イタリアのジョルジャ・メローニ首相は28日、自身が同国検察の捜査対象になっていることを明らかにした。国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪容疑で指名手配されていたリビア警察幹部を、イタリアが突如釈放したことをめぐり、犯罪ほう助などの疑いをかけられているという。
メローニ首相はこの日、ソーシャルメディアで動画メッセージを公開し、自身が検察から、公金の不正利用や犯罪ほう助の疑いをかけられていると述べた。
ICCが逮捕状を出しているオサマ・ナジム(別名アルマスリ)容疑者は、リビアの司法警察のトップで、首都トリポリ近郊ミティガにある悪名高い拘置所の所長でもある。
イタリア内務省によると、ナジム容疑者は今月21日にイタリアで逮捕されたが、数日後に、「法的な、技術的理由」により突如釈放されたという。
ICC側は釈放について相談を受けていなかったとしている。ICCは、ナジム容疑者に対する新たな逮捕状を速やかに発行するとともに、イタリア当局に説明を求めた。
メローニ氏は動画で、ICCの逮捕状がイタリア司法省に送られていなかったため、ローマの控訴裁判所が同容疑者を釈放したと説明した。
「その時点で、彼をイタリア領内で自由にさせないために、即座に追放し、特別便で送還することを決定した」
イタリアのカルロ・ノルディオ法相は先週、ナジム容疑者が「危険」な人物であるため追放処分としたと述べた。この発言は、野党の嘲笑の的になった。
ナジム容疑者の釈放という決定は、野党や、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルなどのNGOから激しく批判された。アムネスティ・インターナショナルは、同容疑者は「何のおとがめもなく行われた、恐ろしい違反行為」という罪を犯したとしている。
リビア・トリポリに到着したイタリア政府専用機から出てきたナジム容疑者を、群衆が歓迎する様子を捉えた動画は、特に激しい抗議を呼んだ。
メローニ氏によると、同氏のほか、ノルディオ法相、マッテオ・ピアンテドージ内相、アルフレド・マントヴァーノ情報担当次官も捜査対象となった。イタリアでは、捜査を受けても、必ずしも正式起訴されるわけではない。
この捜査には政治的動機が絡んでいると、メローニ氏は挑戦的な口調で示唆した。
メローニ氏は、自身を告訴したルイジ・リ・ゴッティ弁護士はかつて、左派の政治家だったと指摘。また、この事案を担当するフランチェスコ・ロ・ヴォイ検事が最近、マッテオ・サルヴィーニ副首相を無関係の事案で捜査していたとした。
「脅迫や威嚇には屈しない」と、メローニ氏は動画の最後に述べた。
「イタリアの変化と改善を望まない人々の間で私が不人気なのは、こうした姿勢のためかもしれない」、「しかし、それこそが、私がイタリア国民を守りながら、特に国家の安全が脅かされているときに恐れることなく堂々と、自分の道を進み続ける理由だ」と、首相は述べた。
ナジム容疑者の釈放を真っ先に非難した、野党イタリア・ヴィヴァ(IV)のマッテオ・レンツィ氏は、メローニ氏が「いつもの被害者意識をあおるために」捜査を「利用している」と思うと述べた。
移民排斥を掲げる極右政党「イタリアの同胞」の党首であるメローニ氏は、2022年からイタリアの右派連立政権を率いている。
移民の取り締まりを繰り返し宣言し、北アフリカからイタリアへ向かうボートを止めると誓っている。また、違法な出航や人身売買に終止符を打つとも表明している。
イタリアのこれまでの首相たちと同様に、メローニ氏はリビア当局や民兵と連携している。物議を醸している、不法移民対策に関する合意にもとづき、移民のボートを阻止するリビアの沿岸警備隊に訓練や資金を提供するなど、財政的・技術的支援を行っている。
(英語記事 Italy's PM investigated over release of Libyan war crimes suspect)