神奈川県と米オハイオ州立大学、医療法人徳洲会、羽田空港を運営している日本空港ビルデングの4者は2月5日、最新の医療技術の発信や未病コンセプトの普及、国際医療人材の育成や研究開発など、医療・ヘルスケア分野でのインド・太平洋を中心とした地域の国際貢献になる取組の連携を強化するための覚書を締結した。
27年にはオープン
これを具体化するために、オハイオ州州立大学と徳洲会は「国際未病・医療センター(仮称)」(IMCE)を、東京国際(羽田)空港旅客ターミナル内に2027年中に開設するとともに、徳洲会が運営する湘南鎌倉総合病院も日米間の医療研修などの面で協力することを検討する。
海外から外国人が多数訪れる空の玄関口である羽田空港で、日米の大学と医療法人が連携してインド・太平洋の患者を中心にした外来診療ができる医療施設ができるのは初めての試みで、この施設を起点にして医療分野でどのような国際貢献ができるかが注目される。
この日の覚書の締結に同席したのは、オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターのジョン・ワーナー病院長、徳洲会の東上震一理事長、徳洲会湘南鎌倉総合病院の小林修三院長、日本空港ビルデングの鷹城勲会長、黒岩祐治神奈川県知事、藤田浩之オハイオ州立大学前理事長・在オハイオ州クリーブランド名誉領事。
今回の日米の医療連携は、両国の医療事情に詳しい藤田氏が両国間の橋渡しをしたことで実現した。同大学のウェクスナー医療センターは広範な分野で医療サービスを提供している北米有数の医療機関で、オハイオ州だけでなく、世界に向けた健康増進に貢献している。
一方で神奈川県は、2017年3月に「かながわ未病改善宣言」を発表、健康寿命を延ばすための長寿社会の取組みを進めてきていた。徳洲会は救急患者の対応で「断らない医療」を実践してきた。県内にある徳洲会の湘南鎌倉綜合病院ではコロナ禍では多くの患者を受け入れてきた経緯もあり、徳洲会はこの取り組みにすぐに賛同した。また羽田空港を運営している空港ビルも未来の空港のあるべき姿を模索していた中、藤田氏から「羽田空港内に国際医療施設をつくってみてはどうか」という構想を受けて、両者の見解が一致、場所の提供を申し出た。
理念に共感
ワーナー病院長は日米医療連携について「羽田空港に医療施設をつくることで、インド・太平洋を超えた多くの人に先進的な医療ケアを提供できる。徳洲会は「生命(いのち)だけは平等だ」という理念のもとで、離島医療も積極的に行っており、ワールドクラスの医療を提供している我々と共感するものがある」と述べた。
東上理事長は「羽田空港というアジアのゲートウェイにつくるのは画期的なプロジェクトだ。コロナ禍のようなパンデミックが起きたら、海外から持ち込まれる感染症をここでコントロールできる。また日米両国が協力することで、予防的な疾病対策ができる。さらに話しが進めば、研究分野でも協力できる」と医療連携によるメリットを強調した。
小林院長は「1年半近く前に藤田さんとの出会いがスタートだった。日米が一般診療の分野で一緒にやっている姿がないことから、『いつでも、どこでも、断らない』医療を提供している徳洲会の理念と、リンカーン元大統領の教えに基づいて同じような理念を持っているオハイオ州立大学に共通点があることから連携をすることになった」と述べた。