エコノミスト誌3月29日‐4月4日号が、馬英九は精力的に中国との関係改善を推し進めてきたが、台湾の人々は中国に猜疑心を抱いており、中台和解の可能性はまだ見えて来ない、との趣旨の論説を掲載しています。
すなわち、馬政権は一貫して中国との関係改善を追求し、中国と多くの案件について合意し、経済統合を推進してきた。その結果、本土からの観光客は285万人と6年間で10倍に急増し、中台間の航空便はゼロから毎日118便になり、貿易額(香港を含む)は年間1600億ドルに増加した。
勿論、中国は、中台の経済的結び付きが深まれば、統一への抵抗は弱まり、台湾は平和的に中国の自治領になると思っているが、馬は、中台関係の改善こそが中国の侵略に対する防御の第一線になると見ている。なぜなら、こうした状況で中国が現状を変更しようと一方的に非平和的手段を使えば、中国も手痛い代償を払うことになるからである。
こうした背景を考えると、今回の学生の抗議運動がなぜ馬にとって大きな問題であるかが分かる。議場の占拠は非民主的な手段であり、また、貿易協定に関する学生や民進党の主張の多くは浅薄だが、彼らの言動は、人々が馬や本土との経済統合に対して抱く不信感と呼応するものであった。また、これには、何世代も前から台湾にいた本省人と、馬のように、1940年代以降に台湾に来た外省人との間の亀裂も関係しており、抗議者たちは馬を中国の傀儡、あるいは何もわかっていない、民意に疎い人物として描いている
世論調査では民進党がリードしており、このことに、中国ばかりか、民進党政権になって中台関係が再び悪化することを恐れる米国も危機感を抱いている。
馬は、米国との関係は1979年以来今が最も良好だと言うが、これは疑わしい。米国は、アジア回帰を言いながら、台湾防衛の約束に言及することはほとんどない。一方、台湾では、米国の政治学者(ミアシャイマー)がNational Interest誌で、「台湾を捨て、中国による強制的中台統一を許す方が戦略として賢明だと米国が考える可能性は十分ある」と言っていることが注目を集めている。