馬はこうした敗北主義にも、中国との対決を標榜する民進党の冒険主義にも組みせず、賢明な中道コースを取ってきた。しかし、馬は疲れ果て、人々は馬にうんざりしているように思える。それでも、台湾の人々の現実主義と民進党の内紛により、次の大統領も国民党から選出されるかもしれない。ただ、馬が、任期を終えた時に、中台関係の安定化を達成し、歴史的調停者として世界から認められることを望んでいるのなら、それは叶わぬ夢に終わりそうだ、と論じています。
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台湾での学生らによる立法院占拠事件については、発生から約1週間も、欧米の主要メディアが社説や論説を発表しないという、異常な状況でした。欧米が事態に困惑して、如何に論評すればよいのか戸惑っていたものと推測されます。
このエコノミストの論説は、 馬英九に同情的な立場から、現在の台湾の政治状況を見ています。この論説でいう馬の中道とは、現状維持であり、両岸関係の改善は、もし中国が一方的に現状維持を変えようとするならば、高い価を払わねばならないようにさせるためだ、と論じています。
しかし、この論理は若干強弁のように感じられます。学生たちが反対しているのは、サービス貿易協定成立により多量の中国人が流入し現状を変えることにあるからです。どこか若干無理をして馬を庇っている感が拭えないのです。
また、米国は台湾を見捨てるという、National Interest誌掲載のミアシャイマーの論説の引用(論説の引用の仕方はミスリーディングで、ミアシャイマーは、米中の軍事能力の格差が今のペースで縮まり追いつけば、台湾を諦めざるを得なくなる、と分析しているに過ぎない)はありますが、米国における台湾擁護論の引用がありません。しかし、台湾に関する最も最近の議会公聴会である、2011年6月の公聴会は、ウォールストリート・ジャーナル紙が「台湾よ恐れるな。議会ここにあり。」というタイトルで論じたほどであり、その後三年経っていると言っても、潜在的に米議会の台湾防衛の意思は存在すると考えてよいでしょう。
いずれにしても、台湾問題は、国民党の時代が終わる可能性を前にして、やっと動き出したばかりです。平和的統合の道筋は既についているのだから台湾問題は考えなくてよい、という精神的怠惰からは、早晩脱却せざるを得ない状況になると思います。
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