COP30の会場でもみ合う抗議者たち(11日、ブラジル・ベレン)
ジョージーナ・ラナード気候担当記者(ブラジル・ベレン)、タビー・ウィルソン
国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)が、ブラジル・ベレンで10日に始まった。会場付近では11日夜、「私たちの森は売り物ではない」と書いた掲示物を手にした抗議者らが、警備を突破して中へと向かった。
現場では国連の警備スタッフらが、ブラジル兵の列の後ろで走りながら、各国代表団に向かって、直ちに会場を去るよう大声で呼びかけた。
国連は、この出来事で警備スタッフ2人が軽いけがをし、会場にわずかな損傷があったとBBCニュースに話した。
ソーシャルメディアに投稿された動画には、伝統衣装らしきものを着た先住民グループと思われる抗議者らや、「フントス」と呼ばれるブラジルの左派青年運動のロゴが入った旗を振る人々が、会場近くにいるのが映っている。
抗議者らは会場の入り口へとなだれ込み、かけ声を上げながらドアを蹴っている。その後、警備スタッフらと激しいもみ合いになっている。
国連によると、デモ参加者らは最初の警備線を突破した後、制止されたという。
ロイター通信は、抗議者が太鼓を投げ、警備スタッフの頭に当たったと報じた。
厳戒態勢の会議で警備線が突破されるのは極めて異例。
この件についてブラジルと国連当局が調査を進めていると、国連は説明している。
COP30には約200カ国の代表団が参加している。公式日程は10~21日となっている。
今年の会合は、世界の気温上昇を摂氏1.5度までに抑えると各国が誓ったパリ協定から10年の節目に当たる。
ブラジルでの開催は初めて。アマゾン熱帯雨林の端に位置するベレンで開かれている。
ここを開催地としたことをめぐっては、論議が沸き起こっている。理由の一つには、アマゾンの住民の多くが、気候変動や森林伐採による環境破壊を声高に批判していることがある。
ブラジルが、石炭と並んで地球温暖化の主原因となっている化石燃料の石油とガスに関して、新たな開発許可を与え続けていることもある。
トゥピナンバ・コミュニティーの先住民リーダーはロイター通信に、「私たちはお金を食べることができない」とし、熱帯雨林での開発に憤慨していると話した。
そして、「アグリビジネス、石油開発、違法採掘、違法伐採から私たちの土地を解放してほしい」と訴えた。
「先住民族のCOP」
今年の会議は「先住民族のCOP」 と呼ばれている。ブラジルの主催者は、会議の中心に先住民を据えることを約束している。
ブラジルのソニア・グアジャハラ先住民相は、COP30を「歴史的な」イベントだとたたえ、世界中から先住民約3000人が参加するとの見通しを示している。
国連が今年発表した報告書では、先住民は地球に残っている生物多様性の8割を保護しているにもかかわらず、国際的な気候変動資金の1%未満しか受け取っていないとされる。
先住民族は、自然環境とその資源に依存しており、気候変動の影響を不均衡に大きく受けている。
ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ大統領はCOP30の開幕に当たり、世界は気候変動否定論を「打ち負かし」、フェイクニュースと闘わなければならないと述べた。
また、ベレンで開催するとの決定は、アマゾンが気候変動の解決に不可欠な要素だと示すためだと説明。「虚偽説明」と「科学的証拠の拒絶」の時代にあって、「COP30は真実のCOPになる」と付け加えた。
同大統領によると、「地球上で最も多様な生物群系」であるアマゾンには、約400の先住民グループを含む約5000万人が住んでいるという。
