2026年10月4日(日)

つくりびととの談い

2026年10月4日

グローブ会社の立ち上げ
天然素材だからこその難しさ

 東駒でグローブ作りを覚えた佐々木さんは、先代亡き後、実質的に経営を任され、会社経営のイロハを身につける。先代の妻が20年に廃業を決めると、残留していた職人2人とともにGRITを旗揚げした。

 店舗スペースの背後にある工場を見せてもらった。

棚にいくつもストックされていた牛革を裁断する金型。「金型は店の財産です」と佐々木さんは話す
牛革を型に合わせて裁断。ロスが無いように裁断、無駄なく使用する

 「まず、人間の手のひらの形をした金型で牛革を大きく裁断します。次に指1本当たり2枚の革を裁断して、ミシンで革の裏面から縫い合わせていくんです。指1本に2枚のパーツが必要なのは、指が入るよう立体的に縫製するためです。

牛革を型に合わせて裁断。ロスが無いように裁断、無駄なく使用する

 こうしてグローブの原型ができ上がったら、裏返して、人間の手の形をしたアイロンで熱しながら形状を整えていきます」

 成形が終わったら直接手に触れる内側の手袋と合体させ、芯材のフエルトを縫い付け、付属パーツを取り付けてとりあえず完成。最後に木槌で叩いたり湯揉み加工を施したりして、手に馴染むよう仕上げていく。

仕上げに湯もみをして形を整える。工場の天井にはグローブが干されており、不思議な光景だった

 「私が主に担当しているのは裁断ですが、1枚の革のどの部分からどのパーツを取るかは目利きじゃないとできませんし、ロスの少ない裁断をするにはパズル的な頭脳も必要です。牛革は産地やタンナー(なめし職人)によって厚み、張り、腰が1枚1枚違います。つまり牛革は〝天然物〟なんです。だから、いくらAIが進化したって、グローブ作りは自動化のしようがありません」

壁に色とりどりの牛革が並べられている。成牛1頭でグローブを6個ほど作ることができる

 差し当たりAIに仕事を奪われる虞はなさそうだが、大手スポーツメーカーのOEM(相手先ブランドによる生産)を請け負うグローブ工場のほとんどは、海外にある。

 「中国、台湾、フィリピン、ベトナム、タイ、インドネシアなど、海外で作られたグローブって、私たちから見ても決して品質は悪くないんです。なにしろ作る数が多いから、職人の腕がどんどん上がっていく。高品質のものを大量に製造できるのが、海外の工場なんです」

 海外勢に対抗できる何かがなければ、国内メーカーが生き残るのは難しい。GRITに秘策はあるのか?


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