グローブ会社の立ち上げ
天然素材だからこその難しさ
東駒でグローブ作りを覚えた佐々木さんは、先代亡き後、実質的に経営を任され、会社経営のイロハを身につける。先代の妻が20年に廃業を決めると、残留していた職人2人とともにGRITを旗揚げした。
店舗スペースの背後にある工場を見せてもらった。
「まず、人間の手のひらの形をした金型で牛革を大きく裁断します。次に指1本当たり2枚の革を裁断して、ミシンで革の裏面から縫い合わせていくんです。指1本に2枚のパーツが必要なのは、指が入るよう立体的に縫製するためです。
こうしてグローブの原型ができ上がったら、裏返して、人間の手の形をしたアイロンで熱しながら形状を整えていきます」
成形が終わったら直接手に触れる内側の手袋と合体させ、芯材のフエルトを縫い付け、付属パーツを取り付けてとりあえず完成。最後に木槌で叩いたり湯揉み加工を施したりして、手に馴染むよう仕上げていく。
「私が主に担当しているのは裁断ですが、1枚の革のどの部分からどのパーツを取るかは目利きじゃないとできませんし、ロスの少ない裁断をするにはパズル的な頭脳も必要です。牛革は産地やタンナー(なめし職人)によって厚み、張り、腰が1枚1枚違います。つまり牛革は〝天然物〟なんです。だから、いくらAIが進化したって、グローブ作りは自動化のしようがありません」
差し当たりAIに仕事を奪われる虞はなさそうだが、大手スポーツメーカーのOEM(相手先ブランドによる生産)を請け負うグローブ工場のほとんどは、海外にある。
「中国、台湾、フィリピン、ベトナム、タイ、インドネシアなど、海外で作られたグローブって、私たちから見ても決して品質は悪くないんです。なにしろ作る数が多いから、職人の腕がどんどん上がっていく。高品質のものを大量に製造できるのが、海外の工場なんです」
海外勢に対抗できる何かがなければ、国内メーカーが生き残るのは難しい。GRITに秘策はあるのか?
