メイドイン東京を守る
生き残るための秘策とは
GRITはスポーツメーカーのOEMを請け負う一方で、TRINITYという自社のオーダーメイドブランドも展開している。
TRINITYは巨人の浦田俊輔選手などプロが採用するほどの高い品質を誇るが、独自のオーダーメイドの仕組みを持っている。
受注数の多い大手メーカーは、一般的にオーダーの選択項目を制限することによって作業の効率化と納期の短縮を図っており、このやり方はネット販売との相性もいい。
「うちの場合は、お客様に直接ここへ来ていただいて、基本となるいくつかのグローブの中からフィットするものを選んでもらい、それをベースに、作り手と会話しながら牛革の色や付属品などを一つひとつ決めていただいています」
なにしろ、店舗ブースは工場の中にあるのだ。工場で試作したパーツを客が気に入れば、それを商品に組み込むこともできるし、こういう付属品を作ってほしいというリクエストがあれば、即座に作って見せることも可能だ。
客が作り手にダイレクトにオーダーを伝えることによって、文字通り、世界にひとつしかないグローブが出来上がることになる。
「普通、お客様が製造現場を見る機会ってないと思いますが、あえてこういう空間を持つことによって、私たちは極力、『できません』という答えをなくそうとしています。過去に作ったことのないものでも挑戦させていただくという心構えで、ものづくりをしているわけです」
いったい佐々木さんは、何を意図してこんな仕掛けを考えたのか?
「私はメイドイン東京のグローブを守り抜きたいと思っているのですが、価格や品質で海外との差別化が難しい以上、最後は人間力で勝負するしかないと思うんです。お客様から、『あいつらに頼みたい』と思ってもらえるかどうかの勝負ですよ」
だから佐々木さんは、自身も含めて人を見せるのだ。職人気質からは出てこない、遠回りの多かった人生にして初めて生まれる発想だろう。
GRITとは「やり抜く力」。佐々木さん執念の戦いは、これから正念場を迎える。
