2026年10月1日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年10月1日

 これに対し、米国はイラン戦争で武器・弾薬を大いに消耗し、新たに大掛かりな軍事介入や支援を開始する余裕はない。さらに、欧州も経済的・社会的理由により、対ウクライナ支援をこれまで通り続けることが難しくなってきている。

 そのような中で、トランプ大統領は、中間選挙を控えて具体的な「成果」を早期に必要としている。プーチンはこれをトランプ政権の「弱み」と見ているはずだ。

 両特使との会談における冒頭発言でプーチンが、トランプ大統領は「困難な状況にあるにもかかわらず」ウクライナ紛争の解決のため努力してくれている、とわざわざ述べてこれを公表したのは、「時はロシア側にあり」とプーチンが考えていることを明らかにしたものだ。

 両特使が進めようとしている「三者協議」はプーチンにとって、直接的にはトランプに「貸し」をつくる機会であり、ロシア側の条件を可能な限り米国を使ってウクライナ側に飲ませるための手段である。またその延長には、米露経済関係の再活性化とロシアの国際的地位の回復がある。

 ただし、現時点でプーチンの念頭にあるのは、首脳会談ではなく「実務者協議」だ。プーチンにとっては、「米ウ露三者首脳会談」より、11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際に実現するかもしれない「米中露三首脳会談」の方が遥かに重要だ。前者は中身が伴わなければ意味がないが、後者は会談を行う事実そのものが政治的に重要な意味をもつ。

米国とウクライナの交渉の方向性

 第二は、ウィトコフ、クシュナー両特使が、ウクライナに対しプーチンの条件を飲ませる方向で交渉を進めようとしていることが伺えることである。

 今回の両特使のキーウ訪問で、具体的に何が議論されたのかは非公開だが、両特使の交渉に臨む姿勢を伺わせる材料が少なくとも三つある。

 ひとつはクシュナー氏の発言だ。同氏は会談後の記者会見で、「プーチン大統領には様々な目的があり、我々はそれが達成できるような方法を見出すための対話を積極的に行っていく」と述べた。さらに、本年2月の三者協議に言及したくだりでは、「参加者がいずれもロシア語を話す」ので、米側が「ロシアの立場をウクライナ側に説明する必要がなかった」ことに「満足」していると述べた。いずれもロシアの側に立つ者としての発言だ。

 もうひとつは、米側の同行者の顔ぶれだ。今回、会談時の映像などで両特使に同行した者として確認できるのは、ホワイトハウス顧問のニック・スチュワート(特別平和ミッション室)、財務次官代行のジーン・ランゲ(制裁担当)、特使の作戦部長アンドリュー・ブラグマンだ。


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