和平のあり方や制裁をどうするかについて実務を担当する者は同行したが、経済支援や軍事協力の関係者が含まれていない。ゼレンスキー大統領は全体会合のほかに、両特使と内密に対話を行い、喫緊の課題である迎撃ミサイルの供与や軍事分野での技術協力などについて話し合ったとしているが、今回米側は、ウクライナとの間でそのような協議を行うことを想定していなかったようだ。特に、特別和平ミッション室のスチュアート氏と制裁担当のランゲ氏については、ロシア側との協議において、和平と制裁解除の展望を話し合う上で必要であった可能性がある。
三つ目は、両特使が携えてきたとされる、米側の「新たな提案」の中身だ。これはなお非公表であり、目下のところ中身については報道以上のものはない。ただ、ロシアやウクライナの多くのメディアが報じるところでは、同提案は、既にウクライナ・欧州・米国間で基本的に合意されている「20項目提案」をベースに、さらに国連の関与やウクライナが合意事項を憲法に規定することが含まれている。
この真偽はいずれ明らかになるであろうが、ウクライナ憲法の改正はもちろん、国連の関与は常任理事国であるロシアの関与を制度化するもので、ウクライナに対しさらに厳しい条件を付するものにほかならない。
決めるのは「戦況」
今後の方向性は、以上のとおり、今後の交渉はウクライナにとって厳しいものになると思われるが、領土や主権といった核心的課題は「何を話し合うか」ではなく、「戦況がどうなるか」によって決まる。そしてウクライナは目下、空爆の応酬という面ではやや劣勢に立っているものの、地上戦では決して負けておらず、ロシア軍はプーチンが言う「著しい前進」からは程遠い状況にある。
ロシアは年内のドンバス占領を目指して、これまで以上の攻勢をかけてくるとみられ、他方ウクライナもモスクワを含むロシア領内深部へのドローン等の攻撃を一層強化するだろう。今後は「三者協議」に向けた動きと戦況の激化が並行して進むと思われるが、和平に向かうか否かは「三者協議」ではなく、戦況がどちらに優位に展開するかによって決まることになるだろう。
