2024年4月20日(土)

風の谷幼稚園 3歳から心を育てる

2009年10月9日

 「最近では『価値観の多様化』の大切さがよく言われます。もちろん、『価値観の多様化』自体を否定するつもりはありません。しかし、この言葉に惑わされ、 “何でもあり”つまり“自分がいいと思えばいい”という部分だけが一人歩きを始めているように思うのです。この結果、社会生活に欠かせない共通ルールを認識できなくなり、自己中心性と無責任さが人の心の中に巣くい始めたのではないかと考えています」(天野園長)

 また、子どもの『自ら育つ力』への過信も危険な一面を持つ。

 「『子どもたちは素晴らしい、子どもたちは自らの中に成長する力を持っている』と言われます。ですから、『子どもを信じて温かく見守りましょう。そのうちしっかりしてくるから…』という主張をよく聞きますが、私は子どもたちの『自ら育つ力』というものを過大評価してはいけないと思っています。極端に言うならば、子どもたちに備わっている素晴らしい力とは『学ぶ力』だけです。だからこそ幼児期には、この『学ぶ力』に依拠した教育を行うことが必要だと考えています」(天野園長)

 この教育を行う前提として、「子どもは白紙状態である」という捉え方が大切であるという。

 「子どもは小さければ小さいほど、自分が生存し続けるために本能で反応します。ある意味では、動物的な存在なのです。それが、ひとつひとつ大人に声をかけられながら対応する中で、少しずつ人間らしく育っていくのです。

 分かりやすい例をあげるなら、おしっこを決まった場所ですることでさえ教えられて初めて身に付けるものですし、食事は座って食べるものということも教えられて分かるものなのです。犬も猫もウサギもしつければこの程度はできますが、人間が人間として育つということは、教えられて学んで自分のものにしていくということだと思います。この『学ぶ力』こそが、人間になってゆくための『偉大なる力』なのだと考えています」(天野園長)

 このように子どもを捉えるならば、「子どもが人間として育つためには、大人はどのような内容を伝えていくべきなのか」ということが大切になってくる。

 そして、「その内容を十分吟味して丁寧に伝えていくこと」が、日常の中で当たり前のこととして行われていることが望ましい。

 ところが、大人がその内容を吟味せず、伝える努力を怠り、「あなたに任せるから好きにしていいよ」と指導をしてしまうと、子どもは判断基準が持てず、自分の場所に引きこもってしまうことになる。その結果、せっかくの「学ぶ力」を生かせない。つまり、子どもが人間として育たないのである。

 そこで、風の谷幼稚園ではこの「3つの力」を育てることを目標として徹底し、個々人の発育段階に応じて、「教える」ことをベースとしたきめ細かい指導を行っている。


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