2024年12月23日(月)

海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年8月4日

 これに対して、クリントン候補は指名受諾演説の中で、米国とメキシコの国境に壁を建設するのではなく、不法移民に対して市民権を与え機会を作ると主張して、トランプ候補に反論しました。同時に、社会の混乱に伴う国民の不安については認め、自身のメール問題に関しては触れませんでした。結局、クリントン候補は、トランプ候補の「私は自分だけで問題を解決できる」及び「私はあなたの声になる」の2つのメッセージは潰しましたが、「法を守り秩序を回復する候補」に対しては十分な反論ができませんでした。

誰に発信したメッセージか

 クリントン候補の本選の核となる「一緒になればもっと強くなれる」というメッセージは、一体誰に対して発したものでしょうか。9つの州のクリントン選対には、類似点が存在しています。ボランティアの運動員は、大抵が中高年の女性で若者が少なく、戸別訪問を行う実動部隊の駒が足りていませんでした。というのは、大抵の若者は、サンダース陣営に参加しているからです。クリントン陣営は、今回の民主党全国党大会ではサンダース陣営との融和に力を注いでいました。「一緒になればもっと強くなれる」というメッセージは、サンダース陣営との結束を意識して作ったものであることは間違いありません。
もう1点、メッセージの対象者について述べましょう。

 クリントン候補は、2012年米大統領選挙でオバマ大統領が使った「異文化連合軍」のモデルを採用しています。主として、女性、ヒスパニック系、アフリカ系、若者及び同性愛者の票を獲得して、勝利を収めるという選挙戦略です。ところが、クリントン候補は未婚の女性や若者から支持を得ることができないため、異文化連合軍の枠組みを完成できないのです。「一緒になればもっと強くなれる」は、異文化連合軍を構成する有権者に向かって発信したメッセージでもあります。


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