こういった時、私はよくスケジュール表を見ながら、今月のやるべきこと、今週やるべきこと、そして今日やるべきことを整理して、各々に優先順位をつけていきます。今日の優先順位を決める例をお話しますと、このとき最も大切にしているのは、実は自分の性格なのです。
何を言いたいのかと申しますと、たとえば今日いちばん重要で、本当は真っ先にとりかからなければならないことがあったとします。でも、整理する書類や返信するメールも溜まっている……私は目の前がすっきり片付いていないと落ち着いて一つのことに集中できない性格なので、こんな時はあまり時間を割かないですむ雑務をできるだけ先に終わらせて、最低限の身辺整理をしてから、時間がかかる難しい課題に取り組むようにしています。そうすることで集中しなければならない状況なのにあっちもこっちも気になって、結局全くはかどらないような事態を避けられます。
スパンが長くなっても同様に、やらなければならない様々な課題と自分が如何に快適に過ごせるかということのバランスを見ながら、自分に向いているやり方で優先順位を決めています。
いまだから話せる、社会人新人時代のこと……
自分に向いているということについて、「優先順位」からは離れますが、自分が本当に好きなこと、向いていることを見つけることの大切さを思い知った体験について、少しお話したいと思います。
そもそも私が大学卒業後新卒で博報堂に入社したときは、本当にできの悪い社員でした。営業職に配属されたのですが、私はクリエイター志向が全くなく、TVCMの企画など制作関連の仕事にもあまり興味がありませんでした。制作の打ち合わせが本当に苦手だったのです。学生時代から「見たことのないものを見てみたい」と思い、旅行が趣味で、今から思えば、そんな心からいろいろな可能性を直観して広告代理店を希望したのでしたが……新卒の頃はそんな風に整理できておらず、自分が制作のアイディア会議で企画を発言するとも予想していなかったので、それは本当に辛かった。会議中は思考が停止していたほどですから、先が思いやられますよね。そのときは「自分は本当に無能なのでは?」と本気で悩む毎日でした。
あるとき私があまりにもアイディアが出ないので、思わず「すみません、いるだけで役に立たなくて」と謝ったら、「いいんだよ、いるだけで」と言われたことがあります。ものすごくぞっとしました。その方がフォローで言って下さったことはよく伝わってきたのですが、もしもこのままここに居続けたら、25歳すぎには一体どうなるのか? 1年目2年目の若い新人社員の女の子ではすまなくなったとき、自分の存在価値は全くなくなってしまうのではないか? と。
また、あるとき社内打ち合わせでクリエイティブディレクターの方が欠席だったので、コピーライターの指示にしたがって、その日の打ち合わせの報告をしにでかけました。一通り話し終えるとそのクリエイティブディレクターは「ふーん」との返事。それを受け取ってそのままコピーライターに伝えると、「何か言ってなかった?」と質問されました。「いえ、何も」と答えると、「それは○○さんが何も言ってなかったのではなくて、君が○○さんが言っていることを理解できなかったんだろう?」とピシャリ。思わず「ひどーい」と心の中では叫んでまた落ち込みましたが、今ふりかえると、全くその通りなのです。
こんなことが日常茶飯事にくりかえされていたので、真剣に3年目までに結婚して辞めなければと思っていたような有様でした。