2024年12月15日(日)

BBC News

2024年11月26日

アメリカのドナルド・トランプ次期大統領が2020年大統領選挙の結果を違法に覆そうとしたとされる事件で、ワシントン連邦地裁の判事は25日、起訴を棄却した。

トランプ次期大統領を刑事訴追したジャック・スミス特別検察官が、現職大統領の訴追を禁止する司法省の方針を理由に、起訴の取り下げを求めていた。

タニヤ・チャトカン判事は、「権利に影響を及ぼすことなく(without prejudice)」訴追を棄却するとした。これは、トランプ次期大統領の2期目の任期終了後に、当局が再び起訴できることを意味する。

スミス特別検察官は、次期大統領が機密文書を不適切に保管したとする起訴についても、同様の棄却を求めている。次期大統領はいずれの事件でも無罪を主張してきた。

スミス氏は選挙結果をめぐる事件で、6ページにわたる文書を提出。「連邦当局による現職大統領の起訴とそれに続く刑事訴追は、合衆国憲法で禁じられているというのが司法省の長年の立場だ」と説明した。

そのうえで、「今回の結論は、被告に対する事件の実体や強度を理由としたものではない」とした。

トランプ氏は1期目を終えた後、大統領経験者としては異例の法的訴追に直面した。アダルト映画女優ストーミー・ダニエルズ氏への支払いに関連した事件で、ニューヨーク州で元大統領として初めて刑事裁判にかけられ、後に有罪評決を受けた

今年初めの時点では、連邦当局が担当した2事件などに関連して100件近くの刑事訴追を受けていた。しかし夏になって連邦最高裁が、大統領の「公的行為」については免責されると判断。その数カ月後、トランプ氏は大統領選で勝利した。刑事訴追はほぼすべて取り下げられ、ジョージア州検察が起訴した事件は、審理が停止されている。

「政治的ハイジャックだった」とトランプ氏

トランプ次期大統領は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、「(連邦事件は)空虚で無法で、そもそも提訴されるべきではなかった」と投稿。

「政治的ハイジャックだったし、こんなことが起こり得たのは私たち国の歴史で最低のことだった。だが私はあらゆる困難を乗り越え、貫き通した」と書いた。

J・D・ヴァンス次期副大統領は、一連の訴追は「常に政治的」だったとソーシャルメディアでコメント。「もしドナルド・J・トランプが選挙に負けていたら、彼は残りの人生を刑務所で過ごすことになったかもしれない」とした。

トランプ次期大統領は、就任したら直後に、スミス特別検察官を失職させると主張してきた。スミス氏は、メリック・ガーランド司法長官が2022年、トランプ氏をめぐる連邦2事件の捜査の担当として任命した。スミス氏は来年辞任する予定だと報じられている

州レベルの事件は宙に

大統領選の結果を覆そうとしたとされる事件で起訴が棄却されたことで、トランプ次期大統領をめぐる長期間の法的争いが終わりを迎える。

スミス特別検察官は、同事件とトランプ前大統領が機密文書を不適切に保管したとした事件で、裁判の維持に努めてきた。だが、トランプ氏が大統領選に勝利したことで、両事件の終結に向けて手続きを開始。ただし、機密文書事件の他の2被告(トランプ氏が雇っていたウォルト・ナウタ被告とカルロス・デ・オリヴェイラ被告)については、文書による上訴を継続すると、25日提出の文書で表明した。

トランプ氏のホワイトハウス復帰が決まったことで、同氏に対する州レベルの刑事事件は宙に浮いた状態になっている。

ニューヨーク州で有罪評決が出された事件の量刑言い渡しは、期限が定められることなく延期されている

一方、ジョージア州で起訴された、大統領選結果を覆そうとしたとされる事件では、州控訴裁が、担当検事の適正性をめぐる以前の判断について検討している。担当のファニ・ウィリス地区検事は、自らが採用した検事との個人的な関係が問題視されたが、裁判所は事件の担当を続けることを認めた。

元連邦検事のニーマ・ラマニ氏は、トランプ氏が大統領選に勝利したことで「彼の犯罪に絡む問題は消える」と解説。「現職の大統領は起訴されない。これは確立されていることだ」と話した。

(英語記事 Judge dismisses special counsel's election case against Trump

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cy0lzj4wyxro


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