今回のテーマは「雇用創出のための『同盟国』日本」です。米国第一主義を全面に出したトランプ就任演説は、選挙モードではないかという指摘があります。確かにそのような見方もできるのですが、新しいメッセージが含まれていた点は看過できません。就任演説終了後、早速ドナルド・トランプ米大統領は演説内容から鍵となるメッセージを取り出してツイッターに投稿しました。本稿ではそれらを中心に演説内容の行間を読みます。
一般市民が統治者
就任演説の冒頭、トランプ大統領は「国民が再び統治者になった」と主張しました。これが選挙期間にはなかった新しいメッセージです。統治者がワシントンの腐敗した政治家やエスタブリッシュメント(既存の支配層)から一般市民に変化(チェンジ)したというメッセージが含まれています。同大統領は、これこそが民主主義であると言いたいのです。演説の終了後、まずこのメッセージをツイートしています。
次に、演説の中で述べた「忘れられた国民は、もう忘れられることはない」というメッセージをツイッターに投稿しました。では、「忘れられた国民」とは誰を指しているのでしょうか。共和党候補指名争いにおいて、米メディアからの質問に対してトランプ候補(当時)は、「物言わぬ多数派」(サイレント・マジョリティ)とは「忘れられた国民」ないし「無視された国民」で、労働者及び退役軍人であると回答しています。トランプ大統領は演説で彼らの見方だというメッセージを発信したのです。
日本は雇用創出のための「同盟国」
さらに就任式後、トランプ大統領は「アメリカの製品を買って、アメリカ人を雇う」というメッセージもツイッターに投稿しました。演説で同大統領は、「アメリカ」という用語を34回も多用しています。オバマ元大統領の2009年就任演説では「アメリカ」は14回でしたので倍以上になります。トランプ大統領は、愛国心、殊に経済ナショナリズムに訴えて「米国第一主義」を強調したのです。
「アメリカの製品を買う」に関連して「工場」「労働者」「産業」もそれぞれ3回使用し、雇用創出をする大統領になるという決意を示しました。演説内容における時間配分は外交よりも圧倒的に内政中心であり、米国第一主義が内政重視であることが明らかになりました。
トランプ大統領は、演説で日本に関して一言も言及していません。ただ、この就任演説から日本は内政の延長線上に置かれていることが読み取れます。もう一歩踏み込んで言ってしまえば、同大統領は日本を雇用創出のための「同盟国」と位置付けているのです。日本側にとってこの点を理解することは極めて重要です。