海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2017年1月26日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

分断のメッセージ

 トランプ大統領は就任演説を「米国を再び偉大な国に取り戻す」というトランプ支持者の合言葉で締めくくりました。『トランプの「切り札」人種カード』で指摘しましたように、この合言葉には「米国を再び白人が優勢を保っていた偉大な国にする」ないし「米国を再び多様性がなかった偉大な国にする」という隠されたメッセージが存在しています。同大統領は肌の色に関わらず血は赤いと愛国心と結束を呼びかけた一方で、熱狂的な白人支持者を満足させるためにこの分断のメッセージで演説を終えたのです。

 トランプ大統領が本気で結束を図りたいならば、雇用創出と共に人種、民族及び宗教といった文化的多様性と寛容さについても時間を費やすべきでした。就任演説では米国社会の多様性を構成するヒスパニック系及び同性愛者について述べていません。

 トランプ大統領には、選挙期間に用いた「米国を再び偉大な国に取り戻す」というメッセージに代わって、次の4年間に向けて新しいメッセージを打ち出すという選択肢があったはずです。ところが、同大統領はそれを選びませんでした。何故でしょうか。

 筆者が中西部アイオワ州デモインや東部ニューハンプシャー州コンコード等で戸別訪問を実施した際に遭遇した白人労働者並びに退役軍人は、反移民及び反文化的多様性でした。同大統領が演説で多様性を強調すると、彼らや極右からの支持を失うからです。それに加えて、米国社会における分断が解消し融合に変わると、多様性を嫌う白人労働者及び極右からの同大統領に対する評価が下がるからです。

 結局、超大国米国の大統領となったトランプ氏は人類の自由や平和について語らず、「トランプ軍団」の核となる白人労働者の雇用創出に焦点を当てた演説を行ったと言えます。同氏にとって雇用創出がいつまでにできるのかが、白人労働者からの支持を維持する鍵になります。

  
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