2024年12月23日(月)

中国メディアは何を報じているか

2017年5月17日

 ここで言っている中国の計画は、国務院が2014年6月に発表した「国家IC産業発展推進要綱(国家集成电路产业发展推进纲要)」。2030年までに産業チェーンの主要部分を世界の先進水準にし、一部企業が世界の第一陣に躍り出るとしている。

李克強首相は鴻海にラブコール

 李克強首相と郭台銘会長の面談については、中央電視台の「新聞聯播」を筆頭に報じられた。「李克強と郭台銘は二度足をとめて何をしゃべったのか」という人民日報のウェブ版で報じられたニュースは、多くのメディアに転載されている。工場で足を止めて5分間話し、車に乗り込む前にも足をとめて語り合った内容を以下のように紹介している。

 「総理は『フォックスコンがさらに多くのハイエンドの研究開発と産業チェーンをここに置くことを望んでいる。我々は開放をさらに拡大し、ビジネス環境を向上させる。中国は巨大な市場と人材資源を擁しており、製造業を発展させる最良の目的地だ』と語った」

 ところで郭台銘会長は4月末にシャープの戴正呉社長とともにトランプ大統領と会談したばかり。そんな中での鄭州訪問に「左はアメリカ、右は中国、鴻海の郭台銘は板挟み状態?」(IT技術に関するコミュニティ・プラットフォーム「与非網」)といった論調も見られる。

 米中が鴻海を巡って争奪戦を繰り広げていると見る向きも多い中、台湾メディアの報道を引用しつつ、郭台銘会長の置かれた状況を楽観的に分析しているのは上海報業集団のニュースサイト「上観新聞」の「中国で工場を建てるか、アメリカで建てるかはゼロサムゲームではない。鴻海の郭台銘『私をどちらかの側につかせるな』」という記事。サブタイトルは「台湾の『中國時報』がはっきり言っている。どこに投資をするのか、郭会長はとっくに答えを持っている。『私をどちらかの側につかせるな』と」。

あくまでビジネスと政治的分析忌避

 李克強首相との詳細なやりとりを鄭州の地元紙「河南日報」から抜粋した後、「台湾メディアには今回の会談を郭台銘の訪米と結びつけて考えている向きがある」と紹介。その上で

 「グローバル化と産業の分業化がますます細分化している今、鄭州の労働コストは低く、米国でパネル工場をつくれば消費地から近くなる。中国で投資するか米国で投資するかの選択は、あれでなければこれというゼロサムゲームではなく、まして経済問題を政治化する必要はない」

 と批判している。

 郭台銘会長の動向を極めて政治的に取り上げた鳳凰衛視と、政治から切り離そうとする上観新聞。前者は拠点を香港に置きながらも、中国政府寄りの報道で知られる。上観新聞の属するメディアグループは上海市共産党委員会宣伝部の傘下にあり、政府寄りであることは言わずもがな。そんな両者の全く違う報道ぶりからは、中国政府と鴻海の関係の複雑さがうかがえる。

  
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