2017年3月期決算が国内製造業としては過去最悪の9500億円の赤字となる見通しと公表した東芝。危機から脱するための東芝メモリの売却手続きが進む。3月29日に行われた第一次入札では、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業が最高3兆円を提示したとされる。ただし、日本政府は軍事転用できる技術が中国に流出することを懸念しており、外為法を適用する可能性も否定していない。
政府系ファンドの産業革新機構が米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)と組んだ日米連合が有力候補として浮上する中、鴻海はアップルやシャープを含めた日米台連合の実現に動いており、盛り返しを図っている。
米中の半導体争奪の代理戦争
こうした買収劇の背後に大国間の政治競争があると指摘するのは香港の鳳凰衛視(フェニックステレビ)。5月9日の「総編輯時間」で東芝メモリの売却について報じた(http://v.ifeng.com/video_7005177.shtml)。
日本政府が外為法の適用も辞さない姿勢であることを報じた後、東京の記者が「日本政府は(外為法の適用について)明確な立場を表明していないが、日本国内でも政府は過剰に介入すべきでないという批判がある」と紹介した。スタジオの司会者の呂寧思がここで引き合いに出したのが、まさにこの日行われた李克強首相による鄭州市の鴻海傘下のフォックスコン工場の視察だった。この視察には、東芝メモリを巡る買収の中心人物、鴻海の郭台銘会長が同行している。
「このところの鴻海グループというのは、一カ月余り、ずっと日本で東芝旗下の東芝メモリ買収で争ってきた。李克強首相はこのフォックスコン視察で、郭台銘がハイエンドの研究開発を多く手掛け、すべての産業チェーンを中国国内に持ってくることを期待していると特に強調した。思うにこれは郭台銘に国際的に活躍させるための一種の激励ではないか」
中国大陸とここまで関係のいい郭台銘が東芝を買収することに、日本政府が憂慮しているとしたうえで、こう続けている。
「実際には日本だけが憂慮しているのではなく、真のポイントは中国と米国の新時代の競争の焦点が、米中間の半導体の争奪戦だということだ」
客観的に見て米国のリードが大きいことは認めつつ、中国には2030年に世界最大の集積回路(IC)つまり半導体の研究開発国家になり、なおかつ今後10年間に1500億元を投資する計画があると紹介。買収を巡る一連の動きの背景を
「大きな政治的原因があり、これは一種の大国間の政治競争だ」
としている。東芝メモリ争奪戦がもはや米中間の代理戦争と化しているとの指摘だ。