2024年12月23日(月)

WEDGE REPORT

2017年6月3日

ニューヨークの伝統的なお菓子?

 ところで冒頭のNYC サンドには、商品名以外にも不思議なことがあった。

 カラメルやチョコレートなどを丸いクッキーで挟んだこの商品説明にNew York Traditional Style(ニューヨークの伝統的なスタイル)と書いてある。でもニューヨークに移り住んで40年近くになる筆者は、ニューヨークでこのようなお菓子を見た記憶がないのだ。

 では一体、このNYCサンドの正体は何なのか? 

 と思ったけれど、会社のウェブページの商品紹介を詳しく読んで、ああ、と合点がいった。
それによると、これは1960年代にニューヨークで作られていた「ハバナ・サンド」を元に開発された商品であるという。日本の商社マンが持ち込んで、人気のニューヨーク土産になっていたというのだ。

NYCサンドの正体は

 さて種を明かすと、このNYCサンドの正体は、アルファホーレと呼ばれるラテンアメリカのお菓子である。「ハバナ・サンド」の原産はニューヨークでもキューバでもなく、アルゼンチンだ。

 筆者はアルゼンチン・タンゴが趣味なので、実は最初に見たときから見当がついていた。この不思議なNYCサンドの写真をソーシャルメディアに載せたところ、思った通りすぐにタンゴ仲間たちが、これは「Alfajores」(アルファホーレ)ではないか、と書き込んできた。

 Havanna(ハバナ)というのは、アルファホーレで有名なアルゼンチンの製菓ブランドである。ブエノスアイレスに行けば、このHavannaと包装紙に書いてあるアルファホーレが市内のどこにでも売っている。でもニューヨークでは南米移民の多い区域か、通販などで取り寄せないと手に入らない。

 調べてみたが、この製菓企業Havannaが過去にニューヨークに工場を持っていたという事実は無いようだ。だから「ハバナ・サンド」が60年代にはニューヨークで作られていたというのは、誤解であろう。

 だが60年代に日本の商社マンがニューヨークから日本に持ち帰ったというのは、本当かもしれない。


新着記事

»もっと見る