株式会社ブラウンシュガーファーストの荻野みどり社長には、食品業界全体がフードロス問題に真正面から取り組むきっかけをつくりたい、という切実な思いがある。(編集部)
廃棄食品の山を公開する理由
私は娘を出産した直後の2011年9月に、ブラウンシュガーファーストを創業しました。企業理念は、「わが子に食べさせたいかどうかを基準に食材を厳選する」。はじめは手作りのお菓子を一つ一つファーマーズマーケットで手売りしていましたが、より良い食材を探すうちにココナッツオイルと出合いました。「これを全国のお母さんたちに届けたい」と勇んで飛び込んだ食品流通業界。その良さや使い方をメディアや小売店に伝えるうちにブームとなり、創業から3年で3000店舗もの小売店でお取り扱いいただけるようになりました。
より良い食の選択肢として、オーガニック食品を日本の食卓に届けたいとの一心でがむしゃらに走り続けてきた結果、気づけば大量の在庫の山を抱え、売れ続けている人気商品でも厳しい業界ルールによりそれを棄てなければならない状況に陥っていました。娘には「ご飯を残さず食べなさい!」と言っておきながら、母である私が商売で大量の食料を廃棄するという矛盾。自己嫌悪に襲われ、こんなことなら会社を畳んだ方がよいのでは……と真剣に悩みました。そこで同業他社の方々に相談してみると、多かれ少なかれ皆さん同じ悩みを抱えていることを知りました。
日本で排出される食品廃棄物は年間2775万トン。このうち、まだ食べられるのに捨てられている「食品ロス」は621万トンあります*。これは1300万人の東京都民が1年間に消費する量に匹敵します。小さな当社が店仕舞いしたところで何も解決しない。であれば、お母さん目線で残したい“食の未来”を作ろうと2017年7月、「#食べ物を棄てない日本計画」というプロジェクトを立ち上げました。中心にあるのは、「子どもたちの未来に食料を廃棄するような食文化を残したくない」という想いです。