先月、「赤ちゃんがハチミツを食べたことによって命を落とした」という痛ましい事故が報じられた。食品の安全性に関して不安をお持ちの人もあるだろうから、今回はこの問題を取り上げる。
衛生環境は改善しているのに不安が大きくなっている
私は、今はフリーの立場で仕事をしているが20年ほど前までは、これでも一応ビジネスパーソン(昔はサラリーマンといってた)だった。大学を卒業してから最初の10年間ほどは、毎日「昼食・夕食・深夜食」という3回を食べる規則正しい(?)食生活を送っていた。そのすべてが外食だった。健康のことなどいっさい考えてはいなかった。
その後、『栄養と料理』編集部に移って改心し(笑)、現在に至っている。当時は、食品の安全性など「どこ吹く風?」という感じだった。しかし、現在のビジネスパーソンはそうではないようだ。若いうちから、健康のことや食の安全性のことなどをけっこう気にしているように見える。
私が無茶苦茶な食生活を送っていたのは、もう40年ほど前のことになる。食生活に関して、その頃から大きく変わった点が2つ。1つは、食べ物を巡る「衛生環境」がものすごく改善されたこと。40年ほど前は、食の安全レベルは低かった。それに比べると今は、BSEなど「昔はなかった食のリスク」はあるにせよ、全体的にみて、私たちの食べ物の安全性は昔よりもはるかに高い。
一方で、昔よりも今のほうが、個人の健康状態にとって「食生活が果たす役割」は明らかに大きくなった。その要因としては、日本人の疾病構造が「感染症」から「生活習慣病」に移ったことが考えられる。そのため人々は(若くて健康な人でさえ)普段の生活習慣、とりわけ食習慣に多大の関心を寄せるようになった。
食を巡る衛生環境が好転しているにもかかわらず、多くの人が「食の安全」に関心を寄せるようになっているのは、皮肉な現象といえるだろう。