石油連盟の橋爪吉博広報グループ部長は、「在庫は十分にあるものの、供給が十分されていない理由は3つ。①被災地へ優先的に届けていること、②東北や茨城にある製油所が地震で被害を受けたこと。被害がそれほど大きくなかった製油所も、安全のために稼動停止していて、再稼動には1、2週間かかる、③ 一部で買い急ぎが生じていること」という。おそらく連休後からは事態も落ち着くはずということだ。
現在、原油の民間在庫はあるものの、それらを各地域に供給するための交通網やそもそも減少していた供給拠点が被害を受けたために、買い手が一部の店舗に購入に走り、一時的な石油不足を引き起こしたということだろう。
石油流通の構造的問題が地震で露見
そもそも石油業界が抱える問題は、構造的に供給過多だったこと。
だがその背景にあるのは、環境エネルギーへのシフトや、EV車、オール電化住宅といった省エネのトレンド。石油業界は大きくそのあおりを受けていたため、ガソリンスタンドやタンクローリーといった供給拠点や設備が減少・削減の一途を辿っていた。
ガソリンスタンド等の給油所は、平成6年の60,421ヵ所をピークに、平成21年には40,357ヵ所と、2万ヵ所以上も減少。とくに過疎地では、ガソリンスタンドがなくなるなどし、遠方まで行かなければならない住民もいるという。
このように、在庫はあるのに供給拠点や物流網が脆弱になっていたという状況のなかで起きたのが、東北関東大震災。
物流のように合理化が進みにくい製油所の縮小が遅れていたいたことが幸いして、関東圏ではガソリン不足が早く解消したものの、物流網や供給設備の規模が小さくなっていたことが、一時的に人々にガソリンを届けにくい状況を引き起こしたと言える。
17日、海江田経産相は、民間備蓄のなかから国家使用量の約3日分にあたる126万キロリットルを放出し、関西からタンクローリー300台を東北へ向かわせることを発表したが、そもそも90年代半ばから減少する需要の状況を受けて、蓮舫議員は第1弾の仕分けで「こんなに要るんですか?」と石油備蓄を仕分けている。長らく石油を“過剰設備”扱いしてきたトレンドが、ここに来て皮肉にも裏目に出た格好だ。
深刻な石油不足に悩まされた東日本大震災は、環境エネルギーばかりに偏るのではなく、エネルギー分野を分散するなど、安全保障面からの見直しをす る機会となりそうだ。
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