DeNAの高田繁GMも、ついにプロ野球界から去ってしまうのか。数多のスター選手が引退したり戦力外通告を受けたり、各球団の監督やコーチが辞任したり解雇されたりした今シーズン、私が個人的に最も寂しい思いを抱いたのが、この人の退任である。
高田GMの進退が表面化したのは、スポーツ各紙が一斉に「辞任」と報道した今月7日。この直後、「お辞めになるんですか」と聞いたら、こんな答えが返ってきた。
「誰が辞めるって言ったんだ! あと10年はやるぞ! おれはしつこいんだからな! 覚えとけよ!」
いかにも高田GMらしい啖呵ではあったが、実際に73歳のいまから10年この仕事を続けたら、任期を満了するころには83歳になっている。高田さんならではの肯定の仕方だろう、と察しをつけていたら案の定、先週11日に退任が球団から正式に発表された。
今後は親会社ディー・エヌ・エーの「フェロー」として、管理職や経営陣にアドバイスなどをする役職に就くという。2011年12月、ベイスターズの球団買収と同時にGMに就任してから7年、確実にチームの戦力を底上げして、16、17年と2年連続でAクラス入り。昨年は日本シリーズにまで進出した。今年も3位にあと一歩と迫っていた功績を評価されての〝論功行賞〟だろう。
高田GMは毎年、ドラフトでの新人獲得に眼力と手腕を発揮。昨秋も単独1位指名して一本釣りに成功した東克樹が、今季11勝5敗と新人王を確実にしている。昨季は今永昇太、浜口遙大らが先発の主力として2ケタ勝利をマーク。いまやすっかり守護神に定着した4年目の山崎康晃も15年の新人王だ。野手を見渡しても、主砲候補の細川成也、走攻守と3拍子そろった神里和毅や関根大気、守備力に定評のある柴田竜拓ら、将来が楽しみな逸材が多い。
その一方、たとえ実績のある選手であっても、チームの方針に従わない選手には厳しい姿勢を貫いた。14年5月には中村紀洋が一部コーチに対し、「自分の打席では走者を動かさないで打撃に集中させてください」と主張したことを中畑清監督ら首脳陣への〝造反〟と見なして即座に登録抹消。その後、中村が話し合いを求めても頑として応じず、一度もふたたび一軍に昇格させることなく、10月には戦力外通告を行っている。
当時の中畑監督はもともと、高田GM自らDeNAに連れてきた監督だった。当初は工藤公康(現ソフトバンク監督)を招聘する予定だったのだが、工藤サイドからヘッドコーチを達川光男(現ソフトバンク・ヘッドコーチ)にしたいと言われ、高田GMが「コーチ人事は球団で決めること」と反論して交渉が決裂。それならばと、次善の策として中畑を監督に据えたのだ。当時、この経緯について高田GMはこう語っている。
「中畑なら、巨人時代からどういう人間かをよく知っている。機動力を使った野球をやるという点でも、おれと相通ずるものがあったからね」
そういう中畑監督に対して、一介の選手が「自分のやりやすいようにやらせてくれ」と主張するなど、高田GMへの造反にも等しい。たとえ2000安打を達成したスターの中村であっても、到底容認することはできなかったのだ。並のGMや球団管理職にできることではない。現場の監督にとっては、まことに心強い後ろ盾だったと言える。