2024年4月20日(土)

From LA

2019年1月18日

 CESでは様々なロボティクス技術も展示されたが、他を圧倒した数と内容だったのがやはり中国企業だ。Baiduは人とコミュニケーションできるロボットをブースに展示していたし、小型の産業用ロボットからパーソナルアシスタントロボットまで、バラエティ豊かなロボット達が登場した。

 中でも注目なのがデリバリーロボットの分野だろう。中国企業はフードデリバリーに特化した自動運転ロボットを展示、実際に会場内でデリバリーを行うデモも行われた。

JD社のフードデリバリートラック

 JDは物流に特化したロボット技術を提供する企業だが、自動運転のデリバリートラックの他にもドローンを使った宅配、倉庫でのピッキングロボットなど、様々なソリューションを提供している。中国では実際にこうしたロボットによる無人配送サービスが実験的に導入されているという。まさにアマゾンが目指すことを一歩進んで実現しているのだ。

同じくJD社のドローン

 また流通の観点からJDが行っているユニークなサービスが、スーパーマーケットでの食品情報の掲示だ。果物など各セクションの上部にスクリーンが設置され、産地や収穫日、輸送経路などを確認することができる。売られている食品がどこで作られ、何日かけて売り場に到達したのかを確認することで、客は商品が新鮮である、と確認することが可能だ。

 フードデリバリーロボットで興味深かったのがPudu社が展示していたフードサービスロボットだ。一見普通のワゴンに見えるが、レストランなどで客の注文した食事をテーブルまで自動的に運ぶロボットだ。中国はロボットレストランが世界で最も進んでいると言われるが、注文からテーブルへの配膳まで、すべてが無人の状態で行える段階に進んでいる。

Pudu社のフードデリバリーロボット

 中国企業が展示していたこうしたデリバリーロボットの例を挙げるとキリがないのだが、新規参入企業の勢いを感じさせたのがForwadXという2016年に設立されたばかりの企業。同社によると「企業やマスコンシューマー市場に対し、世界で最もインテリジェントかつ本能的に操作が可能なAIベースのロボットを提供する」ことが目的だという。

 創業わずか2年ながら、同社はこれまでMicrosoft社が主催したイメージ認識チャレンジというコンペで優勝、IEEEが主催したマルチビューのペットや歩行者トラッキングコンペの世界チャンピオンになるなど、華々しい業績を残している。現在までに取得した国際特許の数も71に上るという。

 ForwardX社が展示していたのはウェアハウスや店舗内の商品デリバリーロボットだ。非常にシンプルながらどこか愛嬌のあるデザインで、記者会見会場ではこのロボットにメディアのために用意したプレスキットを乗せて配布する、など活躍していた。このロボット、わずか2年以内のROIで制作され、従来のロボット制作にかかるコストを半減することに成功した。

 さらに同社ではOvisと名付けた「後をついてくる」スーツケースを現在クラウドファンディングにより製作中だ。このスーツケースは持ち手部分に4箇所のカメラが設置されており、持ち手を軽く握ることで対象を認識、2メートル以上距離が離れると自動的に持ち主に追随する。人混みでも他の歩行者を上手によけながらひたすら付いてくる姿はなんとも愛らしい。持ち手を握るほか、スマートリストバンドと連携させて追跡させることも可能だ。

 もしはぐれてしまった場合でも、スマホにより位置情報をチェックできる。もちろん飛行機に乗り込む場合はバッテリー部分をワンタッチで取り外せるのでセキュリティ通過も問題ない。このスーツケースは799ドルで米国でも発売予定だという。

 BaiduやJDは大手だが、Pudu、ForwardXはスタートアップの中小企業である。それでもこれだけの技術力を持ち、これまでになかった製品を市場に導入するパワーがある。こうした動きを見ていると今後他国の企業が、特に小型デリバリーロボットについて中国と対抗するのは困難なのではないか、と思えた。ドローンはすでに中国企業が市場の過半数を占める勢いだが、デリバリーロボットにも今後同様の傾向が見られるようになるかもしれない。

  
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