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2019年1月23日

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2009年WBC連覇で胴上げされる原監督( REUTERS/AFLO)

 超巨大補強を断行した巨人がいろいろな意味で今オフの話題をかっさらった。広島からFAで獲得した丸佳浩外野手を筆頭に前マリナーズ・岩隈久志投手ら実績とネームバリューのある新戦力を迎え入れ、G党も当初は大歓迎ムードとともに5年ぶりのV奪回へ鼻息を荒げていたはずだ。

 しかし、その代償としてFAの人的補償で内海哲也投手を西武へ、そして長野久義外野手も広島へそれぞれ放出。このダブルパンチによって風向きが一気にガラリと変わった感はどうしても否めない。長年に渡ってジャイアンツをグラウンド内外で支えてきた生え抜きのベテラン2人をプロテクトから外してまでカネにモノを言わせた〝血の入れ替え〟を押し進めたことで、今や世の中の多くの人は巨人に厳しい目を向けている。

 その批判の矢面に立たされているのが、原辰徳監督だ。今オフ、4年ぶりに巨人の指揮官へ復帰。通算3度目の就任にあたって球団側からは指導、采配だけでなく選手獲得などの編成面においても自身の考えが反映できるような体制を約束されている。全権を託された原監督がくだんの巨大補強とプロテクトリスト作成でかじ取り役を務めていたのは疑いようがない事実だろう。指揮官がサバサバした表情で「足し算で丸、(同じくFAで西武から獲得した)炭谷。引き算は内海、長野になった」と発言して物議を醸した経緯からも、それは明白と言い切っていい。

 一時期よりはやや沈静化してきているとはいえ、それでもネット上では「欲しい欲しい病」やら「功労者への非情な仕打ち」などといった原監督への罵詈雑言がまだ散見される。

 しかし、当の原監督に気にする素振りはまったく見られない。いくら嵐のようなバッシングを向けられようとも泰然自若としている。巨人の球団幹部が内海、長野を人的補償で相手球団から指名されて放出せざるを得なくなった際、申し訳なさそうに沈痛の面持ちを浮かべていたのに対し、原監督はさきの「足し算・引き算」の発言からも分かるように公の場では眉ひとつ動かさなかった。

 馴れ合い集団ではなく、一度ぶっ壊して以前のような常勝軍団に必ず再建してみせる――。すでに球団史上ワーストタイの4年連続V逸となっているジャイアンツの今後を託された原監督は就任決定直後、周囲にそう力強く語ったと聞く。だからこそ結果を出すためには時としてドラスティックな決断を下さなければならない。巨大補強とFA選手獲得に絡むプロテクトリスト作成において水面下で陣頭指揮を執っていた時点から、すでに自身はその後に猛烈な批判を浴びせられることも早々と覚悟していたようだ。 

 ちなみにその昔、原監督はこのような言葉を口にしたこともある。

 「監督っていうのは、いかにチームを強くするかが最大の仕事。いちいち選手の顔色をうかがっているだけではダメなんだよ。結果を残して最後はチームや球団全体が笑えるように導かなければいけないんだ。そのためには場合によって非情な決断をしなければならないし、自分自身が嫌われ役になることも恐れてはいけない」

 余りにもキレイごと過ぎると、うがった見方をする人もいるに違いない。しかしながら率直に言って至極全うなコメントだと思う。そして、この言葉は奇しくも今オフのストーブリーグで大きく動いたチーム編成を経て自らが置かれた境遇をも表している。そう考えれば、やはり原監督は今オフ、周りからどれだけブッ叩かれようが柳に風とばかりに軽く受け流しているのだろう。

 勝つためならば手段を選ばず世間の批判など気にすることなく、非情に、そして悪役にも徹する。少々きつい言い方をすれば、原監督はこういう人物像と評せるのではないだろうか。まあ、とにかく強靭なメンタリティの持ち主であることは間違いない。

 巨人の監督を通算12年も務め、7回のリーグ優勝と3回の日本一を達成。実績から考えれば、その能力は疑いようがない。ジャイアンツの指揮官だけでなく2009年には第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表・侍ジャパンの監督にも就任。凄まじい重圧の中、日本代表を連覇へと導いた。同年には世界最優秀監督にも選ばれている。人によってさまざまな考えがあるとは思うが、長年に渡ってプロ野球を取材している立場から個人的に言わせてもらえば、不撓不屈(ふとうふくつ)を地で行く原辰徳氏の真骨頂を垣間見たのはこのWBC開催前後の2008年から2009年だったと考えている。 

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