民主党の大統領候補、バーニー・サンダース氏。初戦の勝利から民主党の方針による中道派ジョー・バイデン氏の一本化で不利な立場にあった。スーパーチューズデーでは大票田のカリフォルニアで勝利したものの全体としては負け、続く選挙戦でも要となるミシガンを落とすなど、「バーニーは終わった」と言われている。
しかし、本人は民主党本部からの撤退への説得に応じず、最後まで戦うことを表明。米国ではBernie for Broke(バーニーは玉砕覚悟)という言葉が流布するなど、その頑固でブレない姿勢に賛否両論だった。
世論調査では、バイデン氏に一時は21%もの差をつけられていたのだが、最新のロイターズ/Ipsosによる調査ではその差が9ポイントにまで縮まった。対象は選挙登録を行っている民主党支持者で、バイデン氏の支持率48%に対し、サンダース氏支持は39%。
とはいえ、3月17日の予備選3州でもイリノイ、フロリダ、アリゾナでバイデン氏が勝利するなど、決してサンダース氏にとって明るい道ではない。獲得代議員数は現時点でバイデン1180、
ただ、予定されていたオハイオ州がコロナウィルスの影響で投票を延期、他の州でも同様に延期が発表されている。これが選挙戦に微妙な影響を与える可能性がある。
米国では国民健康保険の欠落、貧富の差が大きな社会問題だ。今回のコロナ騒ぎでも、保険がなければウィルス検査が受けられない、もし重症化しても病院に行けない、という不安を抱えている人は多い。そうした層にとって、国民皆保険制度や社会的格差の縮小を唱えるサンダース氏は好ましい存在でもある。
総論反対、各論賛成の好例ではあるが、実はサンダース氏が主張する政策に対し、多くの民主党支持の米国人は賛同している。キニピヤック大学の調査によると、国民皆保険制度の実施については賛成が58%、反対が32%。独自の環境政策であるグリーン・ニューディールでは賛成86%、反対8%、最低賃金の15ドルへの引き上げは賛成84%、反対14%、大学無償化は賛成76%、反対19%、学資ローンの返済義務の帳消しは賛成79%、反対18%、巨大銀行の再編についても賛成60%、反対40%、有給の産休制度に至っては賛成94%である。
これを米国人全体を対象とすると、国民皆保険制度は賛成36%に対し反対52%だが、その他に関してはすべて賛成が50%を上回っている。サンダースは社会主義者、と嫌う人は多いが、実際の政策に関しては米国人の多数が支持する内容なのだ。
ただしコロナ騒動はサンダース陣営にとっては諸刃の剣にもなり得る。元々集会を多く開き、草の根的に展開してきたのがサンダース氏の手法だ。しかし現在50人以上の集会は自粛するようCDCが要請していることもあり、現在集会は行われていない。先日のサンダース対バイデンによる初の討論会も無観客で行われた。これがサンダース氏の選挙戦にストップをかけている。
一方のバイデン氏はテレビ広告などで「ひとつの民主党」を強調するキャンペーンを展開している。副大統領候補に女性を指名することを確約したり、開かれたリベラルな政党のイメージ作りに躍起になっている。民主党を強調することで、実際には民主党員ではないサンダース氏のイメージが悪化することも狙いだ。また、サンダース氏が提唱する保険制度、
この先どうなるのかはまだわからない。しかしサンダース支持者の中には「イラク戦争に賛成したバイデン氏に票を投じることはできない。本選挙ではトランプ氏に投票する」という意見も出ている。民主党にとって最悪なのは、このままサンダース氏とバイデン氏が最後まで接戦でもつれ込み、結果としてトランプ再戦の手助けになることかもしれない。