若者の「内向き志向」が叫ばれている。
海外よりも国内を希望する学生が増えている、といったニュースを、読者もよく目にするはずである。今後、国内人口は減少し、経済活動の縮小は避けて通れない。将来的に、ブラジルやインドといった新興大国相手と伍していくためにも、日本企業の「国際化」が求められているといっても過言ではない。
これは企業だけではない。国家を支え、政策を立案する霞が関の官僚たちも同じだ。
今回は視点を変えて、日本の国際化に必要な、国際派官僚の育成について考えてみたい。
「多国間貿易協定」が日本経済を支えてきた
世界貿易機関(WTO)による多国間貿易交渉の「ドーハ・ラウンド」は、2001年にスタートしてから11年経過したが、目下中断している。日本がこの交渉の中で、主導的役割を果たすことができないのは問題である。
本来日本の利益を最大化するものは「多国間貿易協定」であったし、合意されれば今後もそうなるだろう。戦後の高度経済成長が全方位に向けた貿易の発展に大きく支えられてきたことは疑いがない。
ネックはやはり、「農業問題」
にもかかわらず、なぜ、日本は多国間貿易交渉で主導権が握れないのか。最大の問題はやはり農業問題である。元EC幹部の言葉を借りれば、「ウルグアイ・ラウンド交渉において、日本は国内生産保護にのみ関心を集中した」ということである。
この理論的支柱として日本は、“食料安保”(非貿易的関心事項に属する事項)を主張するようになる。
つまり、「外国産の安い農産品が国内に輸入されることで、国内農家が打撃を受け、日本国内の安定的な食料供給が滞ってしまう」という理論である。このため主食であるコメを関税化から例外扱いにするために、例外なき関税化に反対し、例外規定を正当化するために非貿易的関心事項(食料安保)を主張した。
一国食料安保論に固執した日本
しかし、食料安保は一国の問題であり、多国間交渉の問題ではないとして、主題から外された。一国食料安保論に固執する限り、農業貿易の世界的枠組の形成に参加することができなくなったのである。
なお、日本はその後、利害得失の視点から、途中でコメの関税化に切り替えた(例外扱いの条件としてミニマムアクセス数量義務最高限度8%を、関税化によって7.2%で歯止めを掛けた)。