2024年12月23日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年6月11日

 昨年から中国経済全体が減速を続け、低迷している中、各地方政府は地元経済の成長維持に躍起になっているが、重慶市のトップももちろん例外ではない。人気の高い薄氏の失脚後、重慶市民の不満はますます高まってきている。その中で、新しい党書記の張氏たちにとっては、経済の安定を維持していくことが何よりも急務となっているのである。

1000社の外資企業集めた大商談会開催

 薄氏在任中の2011年、重慶市の域内総生産(GDP)の伸び率は前年比で実質16.4%。中国全体の9.2%を大きく上回り、省別(直轄市、自治区を含む)で最も高い伸び率となった。薄氏失脚後に成長率が大幅に落ちてしまうような事態となれば、新しい重慶市トップの張氏の立場がなくなるだけでなく、薄氏を解任した党中央の方針そのものが疑問視されるのである。

 だから今、重慶市政府はあの手この手を使い、何とかして成長率の維持に努めているのである。今年の5月に重慶市政府が1000社近くの外資企業を招いて商談会を開いたのも、このような努力の一環であろう。5月17日~20日には、重慶市政府主催で大型の国際商談会を開き、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスなど外資大手の商談会参加の誘致にも成功した。

 そして張氏は、商談会に合わせて「対外開放政策の連続性と安定性を重視して投資を呼び込んでいく」と強調した。それを受け、日本企業のイトーヨーカ堂が重慶への出店方針を明らかにするなど、外資企業の重慶進出の動きが加速される見通しとなった。

金融・市政・教育にも民間資本を

 一方、重慶市政府は、交通・エネルギー・金融・水利・市政・医療・教育などの領域への民間資本の参入を奨励する方針を打ち出した。民間企業の活発な投資拡大を促すことによって、成長率の維持を図ろうとしているのであろう。

 一般の生産分野は別として、金融・市政・教育などの「社会主義国家」の独占分野への民間資本の参入まで認めてしまうことは、まさに中国の「資本主義化」のさらなる一歩を踏み出したことを意味している。「成長維持」という一つの目的のために、重慶市政府はすでに「なりふり構わず」の境地に入っているように見える。

 もちろんこの方針は中央政府の承認を得ているはずである。というよりもむしろ、経済全体が沈んでいく中で、重慶と同じように焦っている中央政府が、国家の独占分野への民間資本の参入や外資の中国進出を促すような政策を積極的に推進しているのである。


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