2024年7月23日(火)

ベテラン経済記者の眼

2012年9月20日

 最近では「社会保障と税の一体改革」(消費税増税論議)について、各新聞の主張はほぼ横並びだった。これは大多数の国民が自分が高齢となった時の年金など生活が保障されないのは困るという思いと、ギリシャなどの欧州の惨状を目の当たりにして、このままでは日本の財政は立ちゆかないという部分で共感したからではないだろうか。

 原発の問題は見えない放射能の恐怖を生理的に受け付けない人が多く存在することに加え、原発をイデオロギー的に受け入れないスタンスの新聞が存在し、そうしたメディアが先導する形で影響を受ける人も多いというのも理由の一つだろう。原発へのスタンスは1950年代頃からメディアによってまちまちで、長年の報道姿勢に固執している一部のメディアがあることは確かだ。

社説の作られ方と国論を二分する議論

 社説の方向性が各紙でどう決まるのかも大きい。多くの新聞社は論説委員が集まる会議を経たうえで論調が決まると聞くが、組織的に強く意思統一できる新聞とそうでない新聞が分かれている。論説委員個人の主張が通りやすい新聞は論調も特異の方向に流れやすい傾向がある。合議でテーマと論調を決める新聞社では、主張は一貫しているという印象が強い。聞くところによると、論説委員の会議で特定の個人が延々と見解を述べてなかなか終わらない新聞社もあるそうだから、新聞社における論説委員会の位置づけの違いも論調の強さに影響するのかもしれない。

 国論を二分する議論は、古くは終戦後の日本の戦後体制について、全面講和か単独講和かどちらを選択するのかを巡って全面講和を掲げる朝日新聞と現実路線を説く読売新聞など他の新聞との社説が対立したことなど過去にも多い。今回の原発を巡る問題も、いずれ歴史の中でそうした一つになるのだろう。

メディアの報道や論調を比較する重要性

 読者の方々は、経済ジャーナリストとしてあなたはどう思うのかと問われるかもしれない。筆者(段木)の意見は、冷静に現在の状況や予想される影響を考慮に入れると、早ければ十数年後にも原発ゼロを目指すという政府の結論には正直なところ無理があるといわざるを得ない。一部のメディアも報じているが、9月初旬に政府案の原型となる民主党案が固まった際には、密室での限られたメンバーによる短時間の協議で根幹部分が一気に決められた。日米間で取り決めた原子力の平和利用に関する協定や再燃料サイクル政策との整合性、国がゴーサインを出し、建設中の原子力発電所の扱いなどへの言及には乏しく、様々な矛盾も噴出している。重要な政策にも関わらず生煮えのままの性急な決定は選挙向けという批判をされても仕方がないと思う。


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